第七部 第八章
もう一度、俺達は穴に戻り、彼らが五階層に行ったくらいにダンジョンから脱出すべく移動するつもりだった。
それで息を殺していたら、声が聞こえてきた。
「あれ? さっきわざわざ、こっちのはずだって言ってたクンラートが戻って来たぞ? 」
などと知っている声でわざわざ言う奴がいる。
<トゥルーラブ>である。
俺と疾風さんとリリーの顔が歪む。
「そうなのか? 」
妙に渋い声がした。
「ああ、ヨハンネスさん。そう言って一直線に、そこの奥に向ってたんだげと。なぁ、リザ」
「アノボケガ」
リリーがギリギリと歯ぎしりを隣でしていた。
もちろん、俺もである。
まさか、ここまで馬鹿だとか思わなかった。
「おい、クンラート。そっちにいるって言ってたんじゃないのか? 」
などと渋い声でヨハンネスさんと<トゥルーラブ>が言っていた人物の声がした。
「ここには……誰もいない……」
クンラートがそう抑揚のない声で呟いた。
あああああああああああああっ!
まずいっ!
糞馬鹿がぁぁぁ!
「どうする? 」
「壁沿いで認識疎外の布で全力に走って、上に行きましょう。多分、もう駄目だ」
「クンラート、もう一度聞くぞ? <アチアチカップルのアニサキス>はここにいるのか? 」
「ここには……誰もいない……」
ヨハンネスのもう一度の問いかけに、再度、抑揚のない声でクンラートの声がダンジョン内に響く。
「<アチアチカップルのアニサキス>の能力は、ワッセナー商会の極秘資料だと、人の心とか過去が読めると言う話だったが、それだけでは<悲鳴>には勝てない。奴の見た感じの剣の強さはせいぜい一流の下あたりだ。……なるほどなるほど。そう言う事か」
そう、ヨハンネスと呼ばれた渋い声がした。
「バレたっ」
それで俺と<疾風>さんとリリーが走り出す。
もうしようがない。
なるべくダンジョンの隅を走るが、認識疎外の布が効けばいいが、そんなに甘くないとは思う。
「いるぞ! そこの奥だっ! 」
ヨハンネスが叫ぶと同時に俺達がそのダンジョンのかなり開けたドーム状の場所の隅を全力で走る。
「そこの壁に誰か走っている奴がいる! 」
「いたぞ! 」
「えええええええ? <アチアチカップルのアニサキス>君はこんなとこにいたのか? 」
一番声がでかかったのが、<トゥルーラブ>だった。
呼んだら、すぐ出て来るとリザとか言う<ワールドハイドゥ>の仲間の女の冒険者に言った手前で、ばつが悪かったんだろうが、これが低音のイケボイスでダンジョン全部に響き渡りやがんの。
何、この無意味な低音のイケボイス。
「いたぞ! 」
「<アチアチカップルのアニサキス>だ! 」
一斉にダンジョン内を探し回ってた、<ワールドハイドゥ>の手勢が叫んで動き出した。
誰が追い詰めてんだか、わかんねぇや!
「アイツゼッタイニコロス」
リリーがそう固く誓うように話した。




