第七部 第七章
「ここには……誰もいない……」
<ワールドハイドゥ>の俺達の所に探しに来た奴が呟きながら戻っていく。
危なかった。
「あいつ、クンラート・パウエル・ローデヴェイクだ。やばかったな。一人だけ一直線にこちらに向ってくる奴がいたが、あいつだったのか」
<疾風>さんがほっとした顔をしている。
「強いんですか? 」
「王弟の反乱の時に、逃げる王弟と側近たちを次々に追跡して捕まえた奴だ。怪物だぞ」
「そんな奴が<ワールドハイドゥ>にいるなんて」
「多分、今回の件で高い金で雇われたんだと思う。<ワールドハイドゥ>のメンバーにはいなかったはずだから」
「となると、ひょっとして……」
「可能性があるな。本来の<ワールドハイドゥ>の中核グループのメンツがやっているんじゃないのかもしれない。確かに異様に強い気配ばかりだ。<ワールドハイドゥ>は冒険者グループとしたらプラチナグループで強いグループだがどちらかと言うと今いる連中は戦争屋のような気配を感じる。冒険者とは空気が違う感じだ」
冒険者なのに傭兵もやっていた<疾風>さんからしたら、いろいろと感じるところがあるのだろう。
「だとすると……下の階層に彼らが降りると同時に早めにダンジョンから出た方が良いかもしれませんね」
「イヤイヤタブン、ダンジョンノイリグチニモヘイハオイテイルダロウ」
「そうだとしても、こちらのスキルが漏れている可能性もあるし、クンラート・パウエル・ローデヴェイクの様子がおかしいと見られれば、逆のコースをたどればここに着く。そうなったら逃げられない。相手が少数なら俺のスキルはいけるけど、多数だと無理だ。そもそも俺はそんなに強くないし」
「こうなると、最初からレオン殿を狙っていたわけだな。王弟の時にクンラート・パウエル・ローデヴェイクは膨大な報奨金を貰ってて、あくせく働かなくてもいいくらいの大金持ちになっていたから、今更、冒険者なんてしないよ。元は騎士階級で、その後に傭兵になったって変わり種だ」
「いや、騎士階級だけど知らなかったな」
「いろいろとあってあまり表に出て来ない奴だったからな」
「うーむ」
まあ俺は騎士として戦争には参加してないし、父さんが亡くなった後にすぐに騎士階級の身分を売却したので、知らなくてもおかしくないのかもしれない。
亡くなった父はあまり自分の従軍経験をペラペラと話す人では無かったし。
それでも、割に合う仕事じゃないと良く愚痴をこぼしていた。
逆に訓練名目で冒険者みたいに俺とダンジョンに入るのを楽しみにしていた人だから。
大体そう言う姿を見ていたせいで、俺も騎士階級には未練はなかったのだ。
しがらみばかり強くて、報酬は少ないのだから意味がない。
そう言う意味で傭兵になったのなら、クンラート・パウエル・ローデヴェイクは俺と同類なのかもしれない。
傭兵とかの方が後で難癖付けられて、自分の功績を上の奴に掠め取られたりとかは無いからな。
騎士階級で手柄を盗む奴と言うのは一定数いたのは、父の友人からの話で聞いていた。
俺からすると名誉よりも陰湿で暗いイメージしか騎士階級には持ってなかったのだ。




