第七部 第四章
入口が横に長い長方形の穴の中に並んで潜む。
「若干正確性に問題はあるが、この土の穴の中からでも状況は探れる。ほぼ三階層は調べ終わって、下に降りてきている奴らがいる。近くになってきたが、全員が完全武装みたいだな……」
<疾風>さんの顔が歪む。
やはり厳しい戦いになるのかと思ったら違った。
「あの馬鹿が……なんで、あんな馬鹿をアリアーネ嬢は選んだのかな? どうしょうも無いじゃないか……」
<疾風>さんの言葉が辛い。
何が一体? と思ったら、声が聞こえた。
平らな石で上は塞いであるが、外の様子変わるように隙間もあり、声が聞こえてきた。
「<アチアチカップルのアニサキス>! 話があるから出て来てくれ! <ワールドハイドゥ>のフェリクスさんとヨハンネスさんが用事があるんだって! 」
そうやって騒いでいる。
こいつ、筋金入りの馬鹿だな。
「ゴールドサポーターはともかく、テンフィンガーって極秘の存在だよな。それでコードネームを叫びながら出て来てくれって……なんだ? 」
「いや、俺に聞かれても」
「テンフィンガーハゴクヒブタイダヨナ」
リリーですら、この想定は無かったらしい。
「大事な用なんだって、ここに来ているはずだってヨハンネスさんが言うんだよ! いるなら出て来てくれ! なんか褒美も出すってさ! 」
などと宣う。
すげぇ馬鹿だな。
ここまで馬鹿って国宝級だな。
「多分、自分が悪い事をしている自覚が無いな……あくまで善意でやっているような様子だ」
<疾風>さんの唖然とした言葉が辛い。
「きっと口車に乗せられて自分が何してんのか分かって無いんでしょうね」
「一応、最初にテンフィンガーはレクチャーとか研修とかあるんだよな」
「そのはずですが……」
「自分が極秘部隊だって認識はあるのかな? 」
「女の子を引っかけるネタにしか思ってないのでは」
「トリアエズヤツハワタシニコエヲカケテコナカッタシ、ベアトリクス・フォン・アレクストジョウオウヘイカニコノケンヲチクッテショケイシテモラオウ」
リリーもキレていた。
一部私情が入っているものの、その怒りは分からんでもない。
ぶっちゃけ、この馬鹿が神聖帝国にいろいろと教えた可能性すらある。
もう笑ってて許されるラインを超えている。
「いや、まあ、女の子の冒険者を割り当てられて大喜びでやってるのは分かるが、どういう感覚なんだろうな? 」
「多分、ワッセナー商会とディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵にも媚を売っている部分があって、全く、悪い事をしている意識が無いんでしょうね」
「そういえば、あいつは元男爵家の次男だったな。実家との関係もあるのかもしれんが……」
「いや、そんな感覚があれば、もっとちゃんと立ち回るてじょ。完全に馬鹿なんだと思う」
「ワタシモソウオモウ。アマゾネスノコトワザデムノウナミカタコソサイダイノテキダトアル」
リリーの言葉が非常に奥深い。
これだと、相当やらかしていると思われた。
どうしょうもないな。




