第七部 第三章
「とにかく、穴が掘れたら認識疎外の布を被って入り口は平らな石で塞ごう」
それ用の大きな平らな石を<疾風>さんが運んできた。
石で塞ぐとか、もしも崩れたらどうするんだろうなどと気になるが、まあ<疾風>さんもリリーも力持ちだから何とかなるかと思う。
俺は正直、一流の下か二流の上なので、二人のような超一流と比べればしれたものなのだ。
現実は直視せざるを得ない。
あくまで、相手が少数か一対一とか特殊な状況でないと自分の能力は使えない。
過分にテンフィンガーで最強とか言う評価を貰っているけど、それはあくまで少数の相手に卑怯に徹したらに過ぎない。
そう簡単に強くなれるわけでもないし。
まあ、そもそも単なるお役人だからな。
どうも厄介な仕事が多い。
あくまで不正の監視人のはずなのに、なんでこんなに身を削らないといけないのか。
そもそも、なんで<ワールドハイドゥ>にあんな<トゥルーラブ>とか言う糞馬鹿をつけているのか。
こんなもん、俺のせいじゃ無いじゃん。
ついでに、なんでディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵と先代国王と情報部のやらかしを、関係のないゴールドサポーターの俺が処理してんのか訳が分かんない。
「ナニヲボーットシテイルノカシランガ、アナハホレタゾ」
リリーがそう声をかけてきた。
見ると長方形の横長の感じの竪穴が出来ている。
横に幅が広いので、ここに並んで入って隠れるという事か。
「まあ、一か八かだな。弓でもあれば時間が稼げるだろうが、無いからな」
「ナゲナイフナラアルガ」
「あっちがボウガンで武装しているみたいだから、そんなもの近づいてきた時の初手の奇襲しか使えない」
「穴に隠れて見つからないのに賭けるしか無いですね」
そう俺が呟く。
その間にダンジョンの足跡の後をリリーがスコップで消していた。
「プロがいたらバレるでしょうね」
「バレるかもしれんが、そこは賭けるしかない。とにかく、やり過ごして、入れ違いで上に上がって逃げるしかない。もうどうしょうも無い」
<疾風>さんもあきらめ気味だ。
後はアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵が気が付いて来てくれるかどうか。
ギルドキングダムのライトノベルのような性格だと難しいだろうな。
そもそも、それと性格が違うなら、作者であった進藤結衣であるベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が信頼するはずが無いし。
このあたりが本当に難しいとこだと思う。
アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵はギルドキングダムのライトノベルでは結構しくじる事が多いキャラである。
本当にどうするかなぁと、思いつつ穴に入る。
認識疎外の布はつけた。
それで最後に穴に入る前に<疾風>さんがダンジョンの地面に耳をつけた。
最後の確認という事だろう。
「やはり、三階層のあたりから調べながら降りてきている。そして、八階層の連中が上に上がりだした。やはり挟み撃ちという事か……。もう後は運しか無いな」
<疾風>さんが諦めたような顔でため息をついた。
まあダンジョン内だから逃げ場は無いし、ここに引き籠もって相手が気が付かないのを祈って、入れ違いで外に出るか、援軍が来るのを待つしか無いなぁと言うのは間違いないのだ。




