第六部 第十三章
「トニカクイソグゾ。コンナトコロデセイキョウナシンセイテイコクノグンタイトタタカウノハムリダ。ワレワレハサンニンシカイナイノダ」
リリーが思ってたより慌てていた。
「やはり神聖帝国は強いのか? 」
「コウイウデサキニデテクルレンチュウハ、トクニアマゾネスとカワラナイレベルダ」
リリーがどうやら、戦った事があるらしくて身震いした。
自称最強の軍団と言うアマゾネスは、自称で言うだけでなく間違いなく、この世界で最強クラスの戦闘集団だ。
大体、自信家なんでアマゾネスは他者を強く言う事は無い。
そのアマゾネスを体現するようなリリーが神聖帝国の工作を担う軍の連中を警戒していると言うのは相当にやばい話だ。
「一日前に強行して下まで降りて正解だった。明日に<ワールドハイドゥ>が入ってきたら、挟み撃ちにされたかもしれない。こうなると、少なくとも<ワールドハイドゥ>は神聖帝国と組んでいると見て良い。<ワールドハイドゥ>の中核グループも強いからな。今日のうちに出て、ここは近衛のアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵に任せた方が良い。近衛軍の数で一気に潰してもらった方が早い。いくら神聖帝国だとしても、敵国に拠点を作っていたんだ。全滅させられても文句は言えないはずだ」
<疾風>さんもすでにリリーと同じく走っていた。
もちろん、俺も走っている。
これはやばい。
こんな所で神聖帝国の多分特殊部隊なんかと戦えない。
そもそも、俺はゴールドサポーターでテンフィンガーとは言え、単なるお役人さんなのだ。
騎士階級だったのは昔の話で、インチキでもしないと勝てないから、集団の敵と言うのが一番厄介なのだ。
途中から全力で走っていた。
その時だ。
想定外の事が起こった。
ピジョンバットが俺の所に飛んできた。
「えええええええええええ? 」
「ど、どうした? 」
「何が? 」
「嘘だろ? そりゃあ、全くないとは言わないけど……。<ワールドハイドゥ>が十九号ダンジョンに入って来たみたいです」
「ナンデ、ドウシテ? 」
リリーが動揺していた。
「うちのピジョンバットは頭が特に良い奴なんで、同じピジョンバットを連れている奴が入ってきたら、俺に知らせるように命令して入口を見張らせていたんです」
「マジか」
「ハヤクハイッテクルトカハナシガチガウ」
<疾風>さんとリリーが動揺している。
まれにこういうことは起こる。
たとえば、こないだの脳筋の<ナックル>みたいなグループだと休まないで入って来るからだ。
だけど、この場合はもっと最悪な予感がする。
「……嵌められたのかな? 」
俺のつぶやきに<.疾風>さんが唸るように腕組みした。
「可能性があるな……」
「最初から挟み撃ちするつもりだったんだ。だから、こんなとこに神聖帝国の特殊部隊がいたと言う事になる」
「ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が裏切ったのか? 」
「それは無いと思うんだけど、周りがうさん臭いから……」
「参ったな……」
「ド、ドウイウコトダドウイウコトダドウイウコトダ! 」
リリーが動揺して喚く。
俺達は多分、嵌められたんだと思う。




