第六部 第十二章
「アンダーバットを繁殖させて、隠れ蓑にしているんだから、相当腰の入れた隠れ家と言うよりは、完全に基地なんだと思う。護衛としての立場としたら、ここで切り上げる事を提案したい。レオン殿にもしもの事があれば、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の側近達も大変な事になる」
「ソッキンハ、スナオニミナゴロシダトオモウゾ」
<疾風>さんとリリーの意見が同じで頭が痛い。
「だけど、証拠がなぁ」
「これ以上地下に潜るのは無理だろ」
<疾風>さんが隠密行動の為に持っていた、やや暗いランタンを掲げて断言した。
「気が付かれるという事ですか」
「可能性がある。恐らくはそれなりに警戒網を置いているはずだ」
「困ったな」
そう暗闇に目を凝らすと、<疾風>さんの持つ暗いダンジョンでの隠密行動用のランタンで二メートルを超えるダンジョンベアと言うモンスターの死体がある。
それも最近の死体に見える。
流石に六層になるとこういうのがたまには出て来るという事か。
ダンジョンベアはダンジョンの深いとこに居るために、毛皮の質が疥癬とかで悪いのと肉の質も悪いから魔石だけ取って放置しているらしい。
それで俺が近づいて、調べ出した。
「どうした? 」
「いや、地下の連中が倒した可能性もあるだろうと思って……」
「む。なるほどな」
それで<疾風>さんが俺と同じようにダンジョンベアの死体を調べ出した。
どうやら、魔法でなくて、弓で倒したらしい。
それも、ボーガンのように見える。
神聖帝国はボーガンを多用している。
我が国は連射のしやすさから強度の高い合成弓を多用している。
<疾風>さんがダンジョンベアの身体をナイフで切っていく。
腐敗も始まっているので匂いもするが、それでも切っていくと、矢じりを見つけたようだ。
「これは……」
それを<疾風>さんが暗いランタンの灯りに翳した。
矢じりが残っていると言う段階で、間違いなく冒険者の矢ではない。
矢じりが身体に残るように取れやすく細工するなら、多分、軍隊の方になる。
相手に対する殺傷能力を高めるためだ。
矢を抜いても相手の身体に矢じりが残る。
そんな風にするためだ。
「多分、この矢じりは神聖帝国だな。あの国の矢じりは殺傷能力を高めるために、矢じりの刃にねじりをつけてる。矢じりにまで殺傷能力を高めてドリルの様にしているのは神聖帝国だけだ。まさか、本当に神聖帝国の特殊部隊みたいなのが入っているとは……。信じられん」
<疾風>さんが呻く。
どうやら、さっきから神聖帝国ではと言いつつ、まさか神聖帝国の軍隊が入っているとかまでは考えていなかったようだ。
そして、俺も唸る。
こんな他国に自国の特殊部隊のような軍隊を入れるとか、真面目に和貴みたいな馬鹿しかしない。
そんな事をしたら、国家同士の戦争になるし。
「ああ、和貴だ。間違いない。こんな馬鹿な国じゃ無かったはずだ。神聖帝国って……。あーあーあーあー、独裁国家ってトップでこんなに変わるんだ。やばすぎて話にならない。どうしょうか……戦争になるかも」
「そんなに馬鹿なのか? 」
「本当に馬鹿です」
俺が<疾風>さんに答える。
「はああ、とにかく、この矢じりと情報をベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に連絡しなければ」
そう<疾風>さんが思い直したように答えた。
とにかく、証拠は手に入ったのだ。
これを一刻も早くベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に見せなければならない。




