第六部 第十一章
「信じられん話だな。普通に、神聖帝国のゼス皇帝ってこの世界の神の代理人とか呼ばれている立場なんだがな」
などと<疾風>さんが呻く。
そんな資料はアリアーネ嬢から貰っていた。
まあ、あいつが地上の神の代理人とか嘘だろとか思えないし。
普通にあっちがこちらに過剰に関わってこないなら、放置しておけば勝手に自滅すると思うんだけど。
「俺に前世の記憶から固執しているならやばいんだよな。真面目に馬鹿だから直接に戦争してくる可能性もあるし。もっと言うと、もう一度ぶっ殺していやるとか言って、軍隊を出して俺を殺そうとするかもしれない」
「そんな基地外なのか? 」
俺がそう呟くと、<疾風>さんが和貴の性格を理解したらしくて凄い顔になった。
「ツマリ、ベアトリクス・フォン・アレクストジョウオウヘイカトオナジヨウナノガモウヒトリアラワレルワケカ」
「お前、それを言ったら殺されるぞ? 」
「ワカッテイルガ、ゲンジツダゾ。ベアトリクス・フォン・アレクストジョウオウヘイカモブチキレタラヒトリデケンヲモッテ、テキグンニキリコムカラナ」
「ううむ。つまり、最強の国家が双方ともイケイケドンドンのトップに率いられているのか」
<疾風>さんが深刻な顔で考え込んだ。
これをどうにかしろって無茶じゃね?
どうにも、それと気になっていることがあって。
多分、この世界を作ったのは進藤結衣でほぼ間違いないと思われる。
それなのに、なんで排除したはずの和貴をこの世界に呼んだのだろうか。
あちらにも同じように世界をコントロールする異様な力があると言うのか?
あの下手糞な四股をするような馬鹿にそんな事はあり得ないと思うんだがな。
どちらにしろ、双方とも30万近い軍の動員力がある、この世界の覇権国同士の戦いになる。
最悪は世界中が地獄に落ちかねない話だ。
こんな話に巻き込まれるとはなぁ。
しかも、俺が中心人物だし。
「とにかく、今の段階では推定なだけで、百人規模の元軍隊の犯罪者集団が十九号ダンジョンに潜んでいる可能性もあるわけだし。もう少し調べないと、どうとも言えない」
「確かにな。そういう事件は昔、この国でもあったから」
<疾風>さんが言う通り、昔に脱走兵がダンジョンの奥深くで自分達の隠れ家みたいなのを作って、冒険者を襲って生き延びてた話もある。
まあ、それは二十人くらいだから、今回の百人近いのはちょっとあり得ないだろうし。
その二十人でも、それだけ兵士がいなくなるのは軍で問題になるから、当然捜索隊も出て、発見されて戦闘になって終わっている。
犯罪組織だとしても、昔にいた山賊みたいな連中はベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が即位と同時に駆逐してしまったから、いる訳無いんだよね、今の時代に。
<疾風>さんが再度地面に耳をつけて様子をうかがった。
「多分、第八層だな。奥の方だと思うが、そこで基地みたいにしている。真面目に、これ以上はお勧めしないぞ? 多分、この動きからしても手練れ揃いだ」
<疾風>さんの言葉が笑えない。
「さて、どうしょうか」
三人で行けば多分、捕まりそうだな。
それで考え込んだ。




