第六部 第九章
「どうする? 動きからすると、冒険者と言うよりは軍隊に見える」
<疾風>さんの言葉が深刻さを増す。
「犯罪組織とかいう訳ではなさそうですか? 」
「やはり、団体行動とか軍隊は徹底的に教え込まれるからな。動きがどうしても他の奴等からすると違い過ぎるんだ。こんな所で軍隊とか考えられないのだが……」
「まさか……神聖帝国かどこかって事は無いよね」
「わからん。だけど、あり得るかもしれん。ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵はとにかくやり過ぎるからな。あの御仁が収拾がつかなくなったからお願いしますって言うくらいだから、相当ひどい状況なんだろう。あまり無理はしない方が良いぞ。レオン殿に何かあれば我々側近の命が無いと、アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵に延々と頼まれたからな。真面目に近衛も近くに展開しているだろうし、これが分かっただけで充分では無いか? 」
「いや、<ワールドハイドゥ>はまだ来てないし」
「いや、証拠としては充分だろ」
「ムリハスルナヨ。マジメニワタシデスラボコボコニサレルノダゾ」
などとリリーまで真顔で突っ込んで来る。
あの時、風船みたいに腫れていたからな。
しかも、それを直接したのがベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下だと言う事実。
そんな人物が絶対的な全能の力を恐らく持っていて、その上で絶対的な権力者で、何故か俺との結婚を切望しておられる。
物凄い美人だし、頭は良いんだけど、部下は皆が怯えているし、これって何かの罰ゲームかしら。
「いや、ここで呼んでも<ワールドハイドゥ>は尻尾切りするだろうし、しかも、ダンジョンの入口は管理しているから、この19号ダンジョンにそんなに大量に人が入れるわけはない」
「なるほどな。抜け道があるという事か」
<疾風>さんが唸る。
それしか考えれないのだ。
となると、最低でも、その別の出入り口をふさがないと、逃げられてしまう。
「せめて、別の出入り口を見つけないと……」
「コノイノチシラズメ」
などとリリーが驚いた顔をしている。
「一応、ゴールドサポーターだし、テンフィンガーなんだから、料金分は働かないと……」
「律儀だな」
<疾風>さんまで苦笑していた。
「ベツニアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツノヤロウニセキニンヲオッカブセレバイイデハナイカ」
リリーの発言が酷い。
「アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵が嫌いなのか? 」
「エラソーダカラ」
「いや、伯爵でベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の側近で本当に偉いのだが……」
「アノトリノシメラレタヨウナカオノオトコガカ? 」
そっかぁ、やっぱり鳥が絞められたような顔をしているよな。
あの時もそうだったが。
「あのな。ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の要求量は非常に高い。だからこそ、伯爵は伯爵で大変なのだ」
「……だからこそ、俺も失敗できないのだけど……」
<疾風>さんがそうやってアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵の事を庇うので、それは俺にとってもあまり変わらない話である事を話す。
しくじって普通に捨てられるなら良いけど、どうなるか分かんねぇし。
進藤結衣ってそんなに無茶苦茶言う子じゃ無かったのに。
「ふぅ」
ため息が出た。




