第六部 第三章
リリーさんがぶすっとあからさまな顔で不貞腐れておられる。
そういや、俺のせいでベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に制裁されてたな。
「ワタシハオマエノコトガキライ! ナンデアノトキカエラナカッタ! オカゲデヘイカニバキバキサレテ、ワタシノカオハボールニナッタ! 」
リリーさんが憤怒の顔で俺に言う。
ひぇぇぇ、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が自らボコボコにしたんだ。
笑えねぇ。
「アマゾネスって可愛い子も多いんじゃ無かったのか? 」
ちょっと驚いたように<疾風>さんが聞いた。
あまりに、このアマゾネスが筋肉質で無骨なまで不愛想なんで<疾風>さんは驚いていたようだ。
アマゾネスさんは意外に褐色美人が多いのだ。
若いうちに子供を産む義務があって、余計に女の子を産む義務があるから、身だしなみとかおしゃれだったりする。
もちろん強い。
だが、女の子が産まれれば離婚して連れてかれちゃうし、男が産まれると離婚して旦那が一人で残って面倒を見ることになっているので、容姿の可愛さと地雷の大きさで結婚しようと言うのはいない。
男が産まれた時に男の子を見る人間が必要なので、子供だけ種付けして付き合いは無理らしい。
別に男も育てれば良いじゃんと思うが、そこは代々受け継がれた文化なんだそうな。
「ワタシカワイイヨ」
そう思いっきり断言するリリーさん。
「そうですよ。<疾風>さん失礼ですよ。何かあったらベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がブチ切れるんですから、殺されますよ。リリーさんしかいないんです。アチアチカップルのアニサキスさんにつけれるのは」
などとアリアーネ嬢の本音が漏れ漏れして、ぶっちゃけ可愛いとか思ってないじゃんと突っ込みたくなるがやめておこう。
俺が手を出したりしない存在が彼女しかいないと言う心が漏れ漏れだ。
何かあればベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がブチ切れるわけだし。
それにしても、とりあえず、巻き込んで酷い目に合わせたわけだし。
「あの時は申し訳ありませんでした」
そう俺がリリーさんに頭を下げた。
ぶすっとした表情だったが、まあ、あのベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にボコボコにされるのは怖い、本当に申し訳なかったと思っているのだ。
進藤結衣がそんな性格とは思えないので、俺が死んだせいで変わったのかもしれない。
それは申し訳なかった。
「いや、しかし、こんなアマゾネスさんがいたらバレるのでは? 」
「彼女達は姿と気配を希薄に出来ますし。そもそも、この案件は、ちょっと手練れがいてくれた方が良いです。真面目にもしも貴方に何かあればベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が止まらなくなります」
「いや、それなら別の人にした方が良いのでは? 」
「テンフィンガーも人材不足で……」
「いや、別に情報部でいいんじゃないの? 」
「情報部でも厳しいと! 」
「そんな仕事を持ってくるなぁぁぁ! そもそも、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵と情報部がそんな泥沼みたいな状態にしたんでしょ? 」
「そうなんですけどね。とりあえず、<ワールドハイドゥ>に関してはテンフィンガーのベテランを当てることになりましたので<トゥルーラブ>さんがついてます」
「それを止めろやぁぁぁ! 冒険者の矢に刺されて死にかけてんじゃないのかぁ? 」
「『愛の矢じゃなきゃ死なねぇぜ! 』とか言って戻ってきました」
「馬鹿みたいにタフだからな、あいつ」
などと<疾風>さんが苦笑した。
「え? 御存じで? 」
「ああ、上のグループの冒険者やってたら何度かサポーターで会うぞ。殺しても死なないって言われてたから」
笑えねぇや。




