第六部 第一章
「ダンジョンに先回りですか? 」
アリアーネ嬢が少し驚いたように聞いた。
早速会いに行って、いつものギルドの喫茶店でアリアーネ嬢を呼び出した。
一応、俺への扱いは最優先になっているらしくて、すぐに来てくれた。
「本来なら他人のサポーターの関わるものに別のサポーターが関わるのはルール違反ではあるけど、しょうがない」
「他に接触できそうな場所が無いのだ」
などと俺の言葉に<疾風>さんまで同意してくれた。
「ひょっとして、トイレに行っている時にとか考えてますか? 」
「へ? 」
アリアーネ嬢のいつもの読みが深い。
「難しいでしょう。一応、冒険者は15人までですが、10人までの荷物運びを認められていますから」
「ああ、知っているけど」
大グルーブになると獲物が多くなるので、荷運びの人間が10人まで認められていた。
もちろん、あくまで原則であって、ゴールドサポーターの許可を得たら、ゴールドサポーターの監視の下で外から荷運びの人間の応援を呼ぶこともできる。
もちろん、荷物運びは一切戦えない。
もともと、資金力があるところがダンジョンに数百人単位で入り根こそぎにしたのが問題になって人数規制がついた。
そして、人数を制限したら、荷物運びの形で冒険者メンバーを混ぜるのがいたので、サポーター制になったのだ。
金を持っている奴が勝つと言う資本主義は冒険者世界も変わらない。
戦争と一緒だしな。
「えええと、どうして? 」
改めてアリアーネ嬢が聞いた。
「携帯式の冒険者トイレを持ち込んでいるんですよ」
「は? 」
「携帯式って言っても組み立てたら、十分個室になる奴で、それの中で<ワールドハイドゥ>のメンバーはトイレをしますから」
「なななな、そんなものがいつの間に? 」
「ワッセナー商会が最近売り出したんです。それならばメンバーのいる所でトイレが出来ますからね。あの奥の方に入ってトイレって実際には冒険者が結構亡くなっているでしょ? もし、モンスターとかで冒険者チームを狙っているのがいたら、当然、外れてきた人間を狙いますから。宣伝にもなるから、現在試作品ですけど、彼らは持ち込んでますよ。それで問題点を改善したら売り出すそうです」
「ば、馬鹿な」
俺の動揺が止まらない。
ダンジョン内でスキルコミニュケーターを使ってた状況が一つ減ってしまう。
向こうも商売なのだろうけど、こっちも商売あがったりだ。
「やっぱり、トイレの時を狙っていたんですね。まあ、ダンジョン内で一人になる場所ってそこしか無いですし」
「世知辛いな。世知辛いなぁ」
俺が悲しい。
「まあ、絶対に1人になる場所が他で出ないとは言えませんが、一度試してみますか? 」
「……どうしょうか」
俺がアリアーネ嬢に言われて悩む。
「まあ、<ワールドハイドゥ>はワッセナー商会のバックアップがあるし、フェリクスさんはあまり訓練場の近辺以外はいないようにしているって話だから仕方ないですよね。訓練場だと、他の面子が凄く一杯いますし」
「ああ、知ってたんだ」
「あれから、情報部の方で調べたんですよ」
あっさりアリアーネ嬢が話す。
いや、なら調べてから、こっちに言えよと。




