第五部 第十一章
「いや、過大評価しすぎです。本気でたまたま上手くいっただけですから。俺は大した腕は持っていないですし」
「その運とやらも実力のうちだと思うがな」
「とりあえず、まずは今の情報を整理しましょう。まず、訓練場に行くのは危険という事ですよね」
「そうなるな。目新しい人物が来たら対戦を申し込んで来る可能性は高いし、暗部に触れたら始末してくるかもしれない。ヨハンネスと言う正体不明の人物がいる以上、リスクはお勧めしない」
「そうなると、訓練場以外になるという事になりますか……」
「それが、訓練場に宿泊施設が隣接しているから、難しい」
「はあ? フェリクスは実家とかに帰らないので? 」
「あまり父親が好きじゃ無いらしい」
「ああ」
何となくわかる話をされるとしょうがないなと思ってしまう。
父親が面倒くさそうな人物だしなぁ。
人知れず苦労はしているのだろう。
「となると、酒場とか食事とかかな? 」
「ほぼ訓練場の近辺にあるので、隣接している場所しか行かないらしい」
「えええ? 」
「あのあたりはディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵は人材発掘の為にかなり安い値段で美味しい食事を出せる店とかを選んで配置しているらしいんだ」
「なるほど、福利厚生か……」
「ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下と同じ事を言うのだな。流石だ」
何が流石なんだかわからないけど、<疾風>さんが感心している。
転生した世界が同じだから、同じ思想だと感心したらしい。
「どうしょうかな? 」
「四、五日後にダンジョンに<ワールドハイドゥ>の中核グループで潜る計画があるらしい。<ワールドハイドゥ>の補給担当から情報が入った」
傘下団体を入れると<ワールドハイドゥ>は五百人規模の大所帯で、それで集まって冒険者として行動するのはギルドキングダムの女王陛下から特別な許可で頼まれた時だけだ。
規制しないと、それだけ人数がいると、根こそぎ彼らだけで狩ってしまうからだ。
それで一つのダンジョンに同時に入れる冒険者グループの同一メンバーは十五人までと決まっている。
つまり、十五人の凄腕だけ集めた、<ワールドハイドゥ>のトップグループを中核メンバーと言うという事だ。
「補給担当? 」
「<ワールドハイドゥ>の補給を仕切っているのが、俺の昔なじみの友達でな。ふと、そんな話をしていた」
「いや、彼らのダンジョン攻略に俺がゴールドサポーターとしてつくのは厳しいですよ。俺がアチアチカップルのアニサキスとばれたら厄介だし」
「だから、それを外側から追いかけたらどうかな? 」
「……なるほど」
<疾風>さんの作戦が非常に合理的だ。
「こちらはアリアーネ嬢がいるから、それで<ワールドハイドゥ>には別のゴールドサポーターがつくだろうけど、そこからの情報が入る。どのダンジョンに入るかは申告制だから、連中がダンジョンに入る前に先で待っていて、連中の隙を見て調べたらいい」
「それは良い」
思わず、感心してしまった。
それなら、何とかなりそうだ。
嫌な予感もしないし。
ダンジョン内に入れば、仲間といるのだろうし個人調査なんてと思いがちだが、絶対に人間にはある生理作用として排便がある。
小用ならともかく排便は、やはり人のいないとこでするものだから、そこで調べればいい。
実際に俺がスキルコミニュケーターを使う時は半分くらいが、そう言う時に仲間と離れた時に行う。
「では、さっそく、アリアーネ嬢に連絡してきます」
「わしもついていく。護衛だからな」
そう<疾風>さんが笑ったので俺も笑った。
決して、これは高い情報屋を頼まずに済んだと言う俺の喜びの笑顔ではない。
きっと、そのはずだ。




