第五部 第十章
<異教>は変な宗教を信じていて、祈りをささげる時に大麻みたいなものを燻して礼拝していた。
だから、その匂いを嗅ぐと酩酊状態になるのをスキルコミニュケーターで知っていたから、結局戦わざるを得なくなって、それを燻して使って酩酊状態になった時に奇襲みたいにして倒した。
<悲鳴>は相手の悲鳴を聞くと言うサディスティック的な性癖を持つ凄腕の剣士だが、実は右手が上手く動かない。
かっての強敵と戦った時の傷らしいが、ある部分だけ斬れないと言う弱点を持っていたので、それを建物の曲がり角でこちらに打ち込めない状態に持って行って倒した。
もう、こう考えたらわかると思うが、インチキの賜物である。
先に心を読んで情報を知っていたから勝てたのだ。
そして、もう一つはスキルコミニュケーターで相手の精神をコントロールできる。
だから、<異教>には酩酊状態の時に相手の信仰している神の姿で俺が見えるようにコントロールして戦ったので、そりゃあ信仰する神と戦えるはずがない。
だから、その大麻みたいな燻された匂いを嗅いで、神が目の前に現れたように幻覚を見せたら、感激してあっさり無抵抗で倒せた。
<悲鳴>はそこに斬りたいけど斬れないと言う怪我から来る葛藤を心に持っていたので、それをさらに精神的に完全に斬れないように気持ちを強化して、斬れない方向からの建物の曲がり角で奇襲である。
ここまで保険を掛けたら勝てないわけがない。
自分は前世の失敗から、今は石橋を叩いて渡るタイプである。
戦歴が凄いと言われると威張るより、自分の情けなさを実感して落ち込むくらいであった。
スキルコミニュケーターがチートのインチキスキルなんで、準備時間があればほぼ勝てるのだ。
でも、みっともないので、それは言えないしなぁ。
インチキ能力を持つが故の辛さだ。
いきなり、情報が無い相手との戦いだと、かなり難しいよな。
俺自身の腕は、ギリギリ一流か二流の上の方ってとこだろうし。
「それにしても、あのディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵ってガバガバなのでは? 」
「ガバガバと言うよりは、あの御仁はそういうやばい状況を楽しんでいるとこがあるからな。一応、<祈り(ゲベード)>とか連れて自分の安全は確保しているし、その内部のトラブルなんかを上手い事使って自分の利益にするところがある。今回も貴公をあぶりだす事で、見事にベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に道を作ったろ? ああいうのを普通にやる人物だからな」
「あまり、まともな人物じゃないなぁ」
「ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の本質に触れて、それでビビりながらも、あそこまでやれちゃう人物だから。もう、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下もディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵は割り切って毒は毒として使うだろう」
「俺が死んだらどうするの? 」
「自身を過小評価しすぎだと思う。<異教>も<悲鳴>も怪物だぞ? それを二人も倒していて弱いと言う事は無い」
いや、断言されちゃったよ。
あの時は必死で、それほどの大物とは思わなかったからなぁ。
相手と結局は殺し合うのがどう見ても見えたから、早い段階から準備してただけだし。
そもそも、ゴールドサポーターって単なる官僚でお役人さんなんだから、なんで命がけであんな事しちゃったのか。未だに後悔が止まらない。




