第五部 第九章
<疾風>さんが持ってきてくれたものはレモンを絞ったジュースとパンにいろいろと焼いた肉とサラダとか挟んだものと串焼きとかだった。
腹が減っていたので凄く有難かった。
「レモン汁は疲れを取るから。それに、ここの奴はハーブも入れていて身体にいい」
などと教えてくれた。
アリアーネ嬢の情報では<疾風>さんは年の離れた妹さんを何とか治すために、いろんなハーブとかそれだけでなく薬学的なものも調べていて、一生懸命に看病をしていたそうだ。
だからか、ただのレモン汁などではなく、本当になんか元気が出てくるような味で美味しい。
「わざわざ、いらっしゃるという事は相当やばい話があるんですね」
俺が改めて聞いた。
その説明に来たのだろう。
「訓練場は仲間内のリンチと処刑にも使われているって話だ。内部統制の問題で、どうしても言う事を聞かない相手とか、そういうのも出て、それでそういうのの処刑にも使われているらしい」
「は? 」
おいおい、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵、まさか俺を殺す気か?
「どうも、ワッセナー商会を大きくする過程で清濁併せ呑むのは良いんだけど、その濁った汚れが集まったのが、あの訓練場にわだかまっていると言う話だ」
「えええ? フェリクスさんってボンボンって聞いたんだけど? 」
「ボンボンらしい。問題は<ワールドハイドゥ>のメンバーのヨハンネス・ニコラース・ヴェイナンツと言う曲者が仕切っていて、そいつが相当やばいとか」
「暗黒街かなんかの出身とか? 」
「そう言う噂だが、どうもおかしい。フェリックスがヨゼーヒュス・エルンスト・カルクをメンバーにしたのも、実質的にはそいつの仕業らしい」
「んんんん? まさか、神聖帝国の間諜とか言うのでは無いよね? 」
「その可能性もある」
「ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵は何を考えてんだ? おいおい、俺を殺す気か? 」
「冒険者なのにワッセナー商会の内部に結構食い込んでいるらしくて、それで情報が挙げられてないのか、もしくはあのディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵ならあり得るが、それでも利があるなら良いと言う考え方なのか。あの御仁もいろいろと厄介な御仁だからな」
「ああ、それは分かる。意外と火遊びが好きそう。ちょっと、執政の仲間に入れるようにベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に忠告したけど、そう言うタイプだと間違えてたかな? 」
「逆にベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は利用すると思う。そういう相手だといろんな情報を流せる所と言うのは使えるからな。そのあたりも視野に入れているのでは無いかと思う」
「そこに俺が行かされるんだけど」
「うーん。大丈夫だと思うけど、貴公は前からいろいろと噂はあったし。実はその情報を集める時に聞いたけど、アチアチカップルのアニサキスって<異教>とか<悲鳴>とか倒してないか? 」
「ああ、やっぱりそう言う評価か……とほほ。たまたまですよ」
インチキという訳にはいかない。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にばれたら困る。
「たまたまで倒せるような相手じゃ無いんだけどな。裏社会の評価では……」
「偶然、運が良かっただけです」
そうきっぱりと言い切った。
だが、<疾風>さんは俺が謙遜していると思っているらしい。
これが困るのだ、本当に。




