第五部 第七章
やはり、調査なので目立たないように、<疾風>さんは護衛につかないらしい。
アリアーネ嬢の話だと、予想通りアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵が彼なら大丈夫だろうとベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に進言したので、<疾風>さんはついて行かないようになったそうな。
「すいません」
などとアリアーネ嬢が頭を下げた。
「まあ、目立つからね。<疾風>さんを連れて行くと」
などと笑って答えるけど、心の中はブチ切れていた。
確かに<疾風>さんは伝説の冒険者だから目立つ。
だが、相手がどんな連中か分からないのに、俺一人で行かせるとかどういう事よ。
俺が死んだら、お前ら全部ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に虐殺だろうに。
「まあ、そう思いますね……だから、何とかしたいのですが……」
「いや、心を読んだ? 」
「いえ、そんな事を考えているかなと思っただけで」
「いやいや、嘘だろ? 」
どうも、このアリアーネ嬢は心を読むので怖い。
マジで怖い。
そんな事を思っているとか思わんだろ。
確かに俺が一番の凄腕とか言われるのは、本気で普通なら勝てない奴にインチキで勝ってきたからであって、あくまでも、それはインチキでしかない。
ただ、どうしても、戦歴と言うのは記録で残るから仕方ないのだが。
「じゃあ、ちょっと頑張って行って来るので」
しょうがないから、そう言って手を振った。
「とりあえず、危険と思ったら行かないようにしてください。随分長い事貴方の担当をやってますが、意外とやばかった時は嫌な予感がするとかいう話を先に良くしてます。貴方のスキルではありませんが、生存本能がそういう風に察するんだと思います。だから、そう言うのは過去の会話からも当たると思いますので」
「……嫌な予感がしているんですけど」
「では、今日は休んで、嫌な予感がしない日まで様子を見て、調査の日にちを伸ばすので良いのではないでしょうか。私がそう言う風に報告しますので……」
あらやだ。
意外と物分かりが良かったり。
ちょっとうれしい。
「……なるほど過去の蓄積かぁ」
などと納得してしまう。
意外とそう言うのは当たるのだろう。
俺は全部喋ってしまう方だし。
「何か、他には俺の事で忠告できる事とかある? 」
「ええと、すとれっちとか言う奴ですかね? たまに身体の動きが悪いとか腰が痛いとか言う時にされているようだけど、まず間違いなく、その後でかえって痛めているパターンなんでしない方が良いと思います」
「そ、そんな事が……」
思わず、絶句してしまう。
そうか、昔の癖で当時のうろ覚えのストレッチをこの世界でもするのだが、確かにそんな風にいつも愚痴っていたような気がする。
恐ろしい。
「とりあえず、今日は家に帰って一旦寝ようか? 」
「それで良いと思いますよ。それと、その訓練場ですか? 情報をよそで集めてみても良いかも。一応、我々の情報では、ワッセナー商会に関係する連中が特に集まる対戦式の訓練場らしいです」
「対戦式? 」
「木剣とか魔法も混ぜて、いろんなシチュエーションで対戦して、自分の能力を測り育てるそうです。だから、安易に行くと対戦を迫られるかもしれません」
「マジで? 」
「はい」
「知らなかった。良かった。助かったわ」
なるほどな、そんなとこにあまり顔を出さない奴が現れたら、対戦を申し込まれるし、いろいろとばれて厄介な事になるかもしんない。
「今日は休んで寝よう」
そう笑顔で話す。
とにかく、安全に行こうとしみじみ思った。
一度死んでいるのだし。




