第五部 第二章
「つ、つまり、それでカルク男爵家と神聖帝国の関係からヨゼーヒュス・エルンスト・カルクがスパイと言いたいのか? 」
アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵がディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵に問いただした。
「いや、うちは結構、そういう物騒なのが入って来るので、実は仲間になったり雇ったりしたら背景も徹底的に調べますが、その行動を<祈り(ゲベード)>の配下に監視させております。それで、ワッセナー商会の極秘資料を収めてある場所にあるサポーター関係の書類を探っているのを発見しまして、それから引っかけで<祈り(ゲベード)>の配下の者に話をさせたら、しきりとアチアチカップルのアニサキスの話をするのですよ。冒険者にとってテンフィンガーとかサポーターに関係する話をすることはありますが、あそこまでと言うのは珍しい話ですので」
「と言うと、それもあって、こないだの件でまたアチアチカップルのアニサキスの話が出てきたので、興味を持って調べ出したという事か? お前のそう言う部分が私はいささか引っかかっていたのでな」
「申し訳ありません。どうしても、商売とかをする上で気になる事は調べてしまう方でして……。まあ、正直に言いますと、執政に参加できない鬱憤を晴らそうと言う気持ちもどこかにあったのかもしれません。それで、今回このような騒ぎに……本当に申し訳ない」
などとディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が頭を下げた。
横であからさまに鬱憤晴らしとか言っちゃうので、アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵が凄い顔をしていた。
また、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下をブチ切れさせたら、どうするのだと言う気持ちがあるのだろう。
「まあ、良い。それは私の不明もあった。その話はもう終わった」
そう、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がそれで収めた。
まあ、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がそう言う性格なのは何となくわかるので、良いのだ。
どちらかと言うとベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の方がどうなのかが気になっていたのだ。
進藤結衣もそう言う風に相手の反省で怒りを収めれる子だったので、あの雷撃のベアトリクスとか呼ばれるベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に重なって見えるのは、さっきもそうだが嬉しかった。
昔の気質がちゃんと残っていると言うのは、ほっとするからだ。
和貴を殺したことで変わっているなら、それは困る。
何しろ、そう言う所が無かったら、最悪の場合結婚するルートがあるのだ。
異世界すら作り、死んだ俺の魂をこちらに転移させて、などと言う創造神クラスの怪物が俺にそう言う風に執着していると言う事実は恐怖すらある。
だが、進藤結衣は確かに、友達の少ない俺とは気の合う配慮の出来る女性だったのだ。
だからこそ、その部分を大切にして欲しい。
そうじゃないと恐怖の部分しか無くなってしまう。
このギルドキングダムの絶対的な専制君主である女王陛下なだけでなく、もはや創造神に近い力を持っている相手が俺の事を好きとか、美人だからうれしいでは済まない。
毎日が命がけになってしまうではないか。
<疾風>さんがディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵を見て、昔はもっと貴公子然してたのになぁとぼやくくのを見て、本当に怖い。
明日は我が身である。




