第四部 第十五章
「申し訳ない。私もべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にちょっとやりすぎました」
キャラが違う感じでディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がすまなさそうに笑った。
これだけやられて笑えるのだから大したものであるけど。
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は俺をチラチラと見て少し恥ずかしそうだ。
大学時代の進藤結衣は間違ってた事は即座に判断して謝れる子だった。
頭の回転が速いのだ。
だから、わかってくれると思って前世の言葉を使って説得した。
「ここであった話は内緒で終わらせましょう。それで、何も無かったという事でいかがでしょうか」
そう俺がべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下とディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵に提案した。
「それは勿論です」
「……分かりました」
「私も今後は今までと違い、貴方を私の側近として扱います。長い間、申し訳なかった。これからは宜しくお願いね」
そうベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵に微笑んだ。
それで、今まで暴れん坊みたいだったディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が涙ぐんだ。
やはり、自分の人生と伯爵家をかけてまでベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に味方したのに、それがうさん臭いと言うだけで側近に入れなかったと言うのは辛かったのだろう。
自分の性格だと言うのは自覚していたみたいだが、まあ、なかなか年食うとそういうのは直せないものだし。
「そ、それで実は女王陛下に大事なお話がありまして……」
終わったと思ったら、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がいきなりの話だ。
「なんでしょう? 」
「彼が<アチアチカップルのアニサキス>なのですよね」
そう直接ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が聞いてしまうので、ちょっと困ったような目になった。
「実は、私の情報網で入った話ですが、神聖帝国のゼス皇帝がこのコードネームを聞いた途端に衝撃を受けられたらしくて、<アチアチカップルのアニサキス>を探し回っていると言う話なのです」
「はあああああああ? 」
あまりの衝撃的な話に俺が動揺してしまう。
どこから、そんな話が漏れたのか。
「というか、どういう状況でその名が出たのか知りたいのだけど? 」
「いえ、やはり神聖帝国としては、この世界を支配するうえでギルドキングダムが最大の敵だと臣下に進言を受けて、いろいろと調査の報告をしていたらしいのですが、あまり興味を示さなかったゼス皇帝が、テンフィンガーの説明を受ける時にトップの<アチアチカップルのアニサキス>のコードネームを聞いて動揺なさって、何度も何度もそれは何と言う名だと繰り返し繰り返し聞いた後に、表情が変わって、そ奴を連れて来いとお命じになったとの事で……」
「ふあああ? 」
俺のコードネームが他国の皇帝の謁見の間の政治の話の場で何度も繰り返されるとか、何という羞恥プレイ。
そして、信じられない展開。
なんで俺のコードネームをそんな場所で何度も聞くのか。
「……おかしいわね」
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の表情が変わる。
つまり、アチアチカップルなんて殆ど皆は言わないし、アニサキスってこちらの世界にはいないのだ。
だから、このコードネームはこの世界では、あり得ない名前だからだ。
今は俺のせいで、そこそこ有名になったけど、そんな神聖帝国のゼス皇帝が何度も聞いたり探せと言ったりするはずがない。
これは異常だ。




