第四部 第十三章
ドンと扉があいた。
蹴り上げて入ってきたようだ。
いやいや、それはちょっとと思いつつ。
「ワッセナー伯爵! 」
そうべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が叫んだ。
開いたドアから、近衛もついてきてたらしくて、次々と喫茶店にいる冒険者とかを外に出していってる姿が見えた。
こんな話を外に漏らすために行かないからだろう。
俺の情報も漏れてしまう。
それにしても、なんで?
どうしてベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が直接に来ちゃうのかな?
来るなって言う意味で符丁を渡したのに。
「いやいや、私はただ依頼に来ただけなんですがね」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が苦笑した。
「わざとらしい! そんなに私の事が知りたいのかっ! 」
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が鼻白んだ。
「いやいや、いろいろとジーゲン公爵などとひそひそ話をしておられる様子。いい加減に私も仲間に入れてくださいよ」
「いや、貴様のそういう所が仲間に入れるのを躊躇させているんだろうが! 」
「でも、結局、貴方の想い人が誰か分かってしまった訳ですし」
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が俺を見て微笑んだ。
仕方ないので、俺の背後に誰かいるのかな? って感じで後ろを見て誤魔化した。
いや、誤魔化しにすらなっていないだろうけど。
どうしょうかな。
上手い事、ここから逃げるか。
私には身分違いの問題ですからとか官舎に戻ってしれっと寝るか。
何を言っても状況がやばくなるし、不味いよな。
なんで、来ちゃうの?
俺がベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にとって大事な人だってばれちゃうじゃん。
とにかく、俺はここから離脱しないと……。
などと思ったら、アリアーネ嬢が俺の顔を見て俺の気持ちを察したらしくて、手を合わせて懇願していた。
いや、俺がいる方がまずいでしょ。
いくらなんでも、ここからの話にいるのはなぁ。
ああ、でも、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵をベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が殺す可能性もあるのか。
困ったな。
「ほぅ、相変わらずだな。それで私を脅す気か? 」
いきなりテーブルが弾けた。
それだけでなくソファもバカッて感じで弾けた。
何が一体?
見るとべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下から怒りの念動みたいなものが出ていた。
<祈り(ゲベード)>が慌ててディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵の前に立ってボディガードとしての役目をしようとしているけど、弾けるテーブルの破片をディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵の代りに受けるので必死だ。
なんなの?
空間が歪んでいく。
それよって、全ての物が裂けていく。
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下を中心にだ。
まさか、願いを実現する力って神のようなものだから、その怒りだけで空間が歪むとか。
そして、このベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の異能をディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵は知らなかったらしい。
マジでビビっていた。
そらビビるわな。
俺もビビっているし。
剣で切ったりとかならともかく、空間を歪ませて全てを破壊していっているのだ。
いやいや、マジでしれっと帰ろうかな。
アリアーネ嬢が手を合わせて一心に俺に祈ってるけど。
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が亡くなる現場にいたら、ますます厄介ごとに巻き込まれてしまう。
困ったな。




