第四部 第十二章
「ルッテン伯爵家は最近物入りでしたからな」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が苦笑した。
何、この人。
俺がパウルさんをじっと見てるだけで、その辺りに俺が気が付いたと気が付くとは。
恐ろしや。
まあ、正直、人間観察が優れた人ならスキルコミニュケーターが無くても別に相手の動作や表情と言葉から読み取れるよね。
正直、このスキルって言われるほど凄く無いような気もする。
便利なとこはあるけど。
結局、自分がそう言う人との関係性を前世にうまくできなかったから欲したスキルでもあるし。
そんな事を思いながら、俺がちょっと悲しかった。
何しろ、べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が自分が願った事を実現させるスキルに対して、俺のは相手の心を読んだりとかコミュニケーションを円滑にする程度だしなぁ。
この手の転生って凄い能力とか凄い武器とか授かったりすんじゃないの?
地味すぎて泣きそう。
まあ、勇者のポジションだと言うのなら光の属性があるはずなのだが、今の所は音沙汰無いし。
「ここで、よろしいのかな? 」
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が先にどっかりと革製のソファに座った。
それはギルドキングダムの特産の黒銀毛の牛の革を使用したものだ。
銀付き革と呼ばれている、それは革自体が持っている模様・細かい毛穴・肌のキメをそのまま残して、仕上げたものの事だ。
黒毛だが、銀が混ざっているようなつやのある体毛で革も同じように黒い革に銀色が染みたような渋さがあるのだ。
質実剛健と言う感じのべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下のチョイスだ。
部屋の調度もきんきらきんと言う感じではなく、渋さを見せた調度が多い。
渋いよなセンスが。
そして、<祈り(ゲベード)>と<疾風>さんが互いに睨み合いながら部屋に入る。
狭い部屋という事で、<疾風>さんは槍は横に置いたが即座に突きが出来るようにしている。
狭い部屋で戦ったら分が悪いかなと思ったら、槍が組み立て式だったらしくて、狭い部屋で振り回せるように短くした。
継ぎ目はねじの様にはめ込めるらしい。
それを抜いて短い槍に変えていた。
正直、そんな便利な槍だったんだと驚いた。
それにしても、相手を睨みっぱなしで、<祈り(ゲベード)>と<疾風>さんの緊迫感が凄い。
「さて、ではソファに互いに座ってテーブルを挟んでお話と行きましょうか」
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が笑った。
いやいや、そういう雰囲気では無いでしょうに。
俺の脂汗が止まらない。
この緊迫感の中で座りたくないなと<祈り(ゲベード)>と<疾風>さんをちらと見た。
「お待ちください! 」
その時だ、アリアーネ嬢の悲鳴が喫茶店の表の方から響く。
「ほう、答え合わせは出来たようですな」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がにこやかに笑った。
何の、答え合わせ?
え?
無茶苦茶動揺した。




