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第四部 第十章

「ほう、なるほど」


 ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵の顔が綻んだ。


 まるでやっと目当てのものを見つけたような笑顔だ。


 うわ、やべぇ。


 この人、敵に回したら厄介な人なんだろうなと思った。


 しかし、一歩間違えば、べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下を敵に回すかもしれないのに良くやる。


 実際、こうあって欲しいと思ったら実現してしまうスキルか何かを持っているなら、悪いが怪物のディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵にしても勝つのは難しいだろ。


 そう思いながら、自分でも、そのべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の夢を実現するのには、抵抗があるのが何とも言えない。


 待てよ。


 ひょっとして、この人と仲良くなるのが良いのか?


 などと思ったが、じっとディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵を見てやめる。


 他にも人がいるので、心を覗くスキルコミニュケーターは使うとまずいので、その幾分下のスキルで見た。


 分かんねぇ。


 いや、分かるのだが、思いっきり存在が大きい。


 人中の竜と言う奴だ。


 しかも、自分の損得を超えた所で、こちらの情報を得ようとしている。


 何らかの自分だけの絶対に譲れない何かを持っている人物だ。


 こういう人間には打算が通じない。


 逆に、下手するとべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下だけでなく、この怪物のディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵まで敵に回してしまう。


 安易に触れるべきではなさそうだ。


「何か私を見て分かりましたかな」


 そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が楽しそうに綺麗な顎鬚を撫でながら笑った。


 ああ、俺がアチアチカップルのアニサキスだとして考えて、そのスキルはすでにバレているという事か。


 とすると話は変わってくる。


 自分が俺に敵意が無い人物だと教えようとしているのか?


 そして、状況によってはべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に味方しますよと。


 でも、それを言うと、前回の前国王の弟派閥とべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の内紛の時に即座にあからさまにべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の味方をしているので、すでにベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の派閥ではあるのだ。


 だが、それだけの事をしておいて、側近にはなれなかった。


 多分、うさん臭いと見られているのだろう。


 何しろ、一癖も二癖もある人物である。


 実際、財力もあるし能力も凄い。

 

 だから側近にするのはベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に抵抗感があるのかもしれない。


 コントロールが出来ないかもしれないからだ。


 というか、確か、ライトノベルのギルドキングダムの登場人物にいなかったんだよな、この人。


 この世界は進藤結衣が作ったギルドキングダムに凄く似ている世界だが、問題はその時のキャラクターじゃないのが混ざっているのだ。


 実は、アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵は女王陛下の側近としてギルドキングダムに出て来る。


 本人が書いた通りの生真面目な無骨な性格で、だからこそ、自分が作ったキャラクターだから信用できるのだろう。


 それに対して、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵は自分の書いた作品にいないのだ。


 だからこそ、信用できないのだろう。


 もともと、用心して側近のアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵にも昨日まで自分が転生者であることは言っていなかった。


 大人しくて温厚な性格だった進藤結衣にしたら、自分の作ったキャラクターですら警戒して全てを明かしていなかったのに、そりゃあ、こんな恐ろしい存在に明かすわけもないし。


 近くに置いときたくないと言う配慮も働くよな。


 それが多分、ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵としたらなぜだと言う思いもあるのかもしれない。




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