第四部 第九章
「ふうむ、なるほど。そういう事ならば、私もべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下のご自慢のギルドの喫茶店の貴族用の個室に行かせて貰おうか」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が豪快に笑った。
「ただ、この馬車はご貴族の方がもし乗られておられるのなら、流石にここでお待たせするのは申し訳ありませんので……さらに、ここはギルドキングダムの中央の冒険者ギルドの前ですし……」
そう俺が暗に馬車を何とかしてくれと話す。
「ははははははははははははは。誰も乗っておりませんわ。どのような方が来られるのか分からなくて、ご準備させて戴いたまで」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がさらに愉快そうに笑った。
うえええ、じゃあ、やっぱり俺の事を探っていたのか。
しかし、こんなの持ってきて乗るわけないじゃん。
というか、乗ったら誰かに知らせる気だったのか?
もしくは、早い段階でベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下についた人だし、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の想い人に対しても先に把握したい気持ちがあるのだろう。
そして、その男の器量なども図っているのかも。
ゴールドサポーターでアチアチカップルのアニサキスらしいと考えると、簡単に年齢と騎士階級出身で目星が付くのがなぁ。
貴族階級じゃないと、ゴールドサポーターみたいな高級官僚にこの年齢ではならないってのは確かにそうだし。
とにかく、シーゲン公爵家の件とか、その辺りの事はいろいろと知ってそうな感じだ。
「<祈り(ゲベード)>」
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がそう呼んだ。
召使い用の馬車からひょろりと青い顔をした奴が出てきた。
不健康と言うよりは闇社会に染まるとこんな感じになる。
ぞっとした。
俺のスキルコミニュケーターで見ると間違いなく相当腕がたつ相手だ。
護衛ではない殺し屋に近い。
なんで、こんな奴を連れてんだが。
このギルドの喫茶店の中は闇社会では無い系のそう言うのの集まりなんで、やばいとこにやばい奴をされてこないでも良いのに。
「一応、護衛ですので非礼をお許しください」
そう言って、<疾風>さんが俺と<祈り(ゲベード)>の間に入った。
双方がすでに殺気を押し殺しているような顔をした。
実際、俺が見た感じでも<疾風>さんでも互角クラスでやんの。
なんてこった。
俺を殺す気なのだろうか?
「なるほど、相手の技量を即座に理解する事が出来るのですなぁ」
そうディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵が俺を見て美しい顎鬚を撫でながら笑った。
いやいや、そんなやばい奴を連れて来て、こっちの反応を調べてんのか?
俺の能力を探っているように見えた。
物凄くタチが悪いや。
「あの……非礼でございますが、私もご一緒させていただきたく」
いきなり、アリアーネ嬢が必死になってディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵に頼み込んだ。
あっちゃー、やっちまったなぁ。
恐らく、この<祈り(ゲベード)>の技量を読んでアリアーネ嬢もまずいと思って出てきたらしい。
慣例を破って。
ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵がしてやったりの顔で笑った。
それを見て呆然とする俺の顔を見て、アリアーネ嬢が状況を理解して真っ青になった。
そう、彼女は俺が本当に重要人物である事をディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵に教えてしまったのだ。




