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第四部 第七章

「おお、お待ちしてましたぞ」


 そう両手を広げて恰幅の良い笑顔の男がかしずく護衛や執事達とともに立っていた。


 アリアーネ嬢が無言であちゃーって顔をしていた。


 さらに、臭い匂いをさせていたもう一つの護衛の近衛の使い手さんがそれを見て凄い顔をしている。


 ううむ、分かるなぁ。


 誰か使いの方が来て屋敷に呼ばれるのかと思ってた。


 この人物が直接来るとは思わなかった。


 目立ちスギィ!


 ワッセナー商会の当主であるディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵である。


 質実剛健のぴしっとした服装をして、大きな商会を切り盛りするやり手の当主と言うイメージ通りの人物だ。


 ギルドキングダムの政財界の超大物で、ジェイドグループの<疾風>さんの護衛だけですら目立つのに、まさかのこれだ。


 どうやったって目立ちすぎである。


 近衛もパニクっているが、アリアーネ嬢もどうしょうかとまたまた珍しくパニクっていた。


 べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は暴君で、恐らく目立たないようにしろと凄く命令されているのだろう。


 多分、ジーゲン公爵との養子の件が達成されるまでは静かにしていないといけないのだと思う。


 もし早い段階に露見すれば、他の公爵家や王家の親族が間違いなく止めに入るだろう案件だし。


 それが成るまでは目立ってはいけないのだと思う。


 それなのに、この現状である。


 冒険者の息子でなくて、当主自らが迎えに来るとか。


 話になんない状態だ。


 ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵もまさに怪物。


 べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下につくと決めたら、べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の叔父である前国王の弟からの誘いを蹴り、前国王の弟派の公爵家の当主の面会すら退けたと言われる。


 伯爵なのに王族や公爵家を無視して信じられない行為である。


 だが、それで良かったのだ。


 前国王の弟は他国との繋がりを露見されて、幽閉された。


 前国王の弟派は壊滅である。


 べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の人物を見抜いて対応した素晴らしい目利きというところか。


 日本の戦国時代でもそうだが、人相など人物鑑定は非常に進んでいた。


 実際にしばらく身分を隠していた側室の子である前田利常なども、普通の人物で無いと思うとか子供時代に他の家臣達に会った時に非常に高い評価を何度も言われていた。


 自分が仕える人物が自分の人生に直結するのだ。


 それを見抜けないと下の者は生き残れない。


 そういう意味では、今は乱世なのかもしれない。


 とりあえず、これ以上目が集まると困るので、早く馬車に乗ろうと思って言われるがまま動いた。


 そしたら、俺の乗る馬車が六頭立ての王族に近い身分が乗るような豪奢な馬車だったので、アリアーネ嬢が酷く困惑していた。


 実際に周りの目が凄い。


 いくら高級官僚であると言っても俺が乗るような馬車では絶対に無いのだ。


 まるで、誰かに知らせているようにも見える。


 スパイが自分の息子の<ワールハイドゥ>にいるとか騒いでいたが……。


 まさかな……。


 非常に嫌な予感がして呻く。


 碌な事が無い時に、意外とよく働く感なのだ。


 スキルコミニュケーターの一つの力かもしれないものだ。


 凄く嫌な予感がする。


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