第四部 第六章
「<疾風>さん、ご迷惑をおかけしてすいません」
俺が申し訳なくて<疾風>さんに頭を下げた。
いや、実際に、ゴールドサポーターを護衛しているとはっきり分かるようにと、べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が着ている服を黄色にしたとか言うが、ちょっと目立ちすぎ。
ジェイドグループの伝説の男でもある<疾風>さんがまるでチンドン屋である。
そういや、昔、安売り店が黄色いチラシとか使ったりとかあったが、黄色と言う色は安いとかそういう暗示を与えやすいと聞いたことがある。
参ったなぁ。
そう思ってたら、<疾風>さんが俺の前で跪いた。
「シーゲン公爵……いや陛下か……。本日より、宜しくお願いいたします」
そう厳かに剣を目の前に置いて俺に一礼した。
「ぴゃああああああああああああ! 」
まだ決まっていない話をををををを!
「ふんがぁぁぁぁぁぁ! 」
アリアーネ嬢の必殺の飛び膝蹴りが飛んだ。
かって、ギルドでアリアーネ嬢にしつこく言い寄ったプラチナグループやゴールドグループのアホな冒険者達を次々と昏倒させたと言う伝説の飛び膝蹴りである。
今考えてみれば武闘派で有名だった。
あの近衛の中でも凄まじい武勇で有名なアドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵の妹である。
弱いわけがない。
そもそもヘールツ伯爵家は武名で鳴らした家であるし。
あんな、鳥の締められたような顔とか、何か憑りつかれたみたいに俺に半狂乱になって祈りを捧げたりとか酷い姿しか見ていないが実はこの兄妹は凄い人なのだ。
いや貴族か。
「何か? 」
アリアーネ嬢がちらと俺を見た。
本当にスキルコミニュケーターを持ってないんだよな。
ここまで心を読まれると困る。
「いやいや、何故? 」
疾風さんが一撃食らって倒れたまま凄い顔してる。
「いや、極秘って言われたじゃないですか」
「ああ」
<疾風>さんがなるほどって顔をした。
「申し訳ない」
そう<疾風>さんが頭を下げた。
いやいや、ジェイドグルーブの天下の<疾風>さんがやらかしたんで、誤魔化しようが無いのではとマジで思う。
実際に、パウルさんとアンナさんは張り付いたような顔をして俺達を見ていた。
そして、さっきまで静かに気配を消していた、怪物集団が蠢き出した。
殺意が少し漏れている。
俺だから感じ取れるレベルではあるが……。
知られたものを全て殺す勢いだ。
やぱいなぁ。
化け物揃いだよ。
そもそも、アリアーネ嬢も良く冒険者の間で話題になる人物だし、<疾風>さんを飛び膝蹴りとか話題にならないわけないじゃないか。
困ったもんである。
「依頼者が来ましたので……」
そうそそくさと誤魔化しているつもりかもしれないが、<疾風>さんが頭を下げた。
「わ、分かりました」
仕方ないので、そう答えて俺は喫茶店を外に出た。
「目立たないように」
そう無茶苦茶な囁きをしながら、アリアーネ嬢が俺を先導した。
そして、それなのに喫茶店の前に大貴族が乗るような豪奢な馬車が十台以上並んでいて俺達は面食らっていた。
目立ちスギイ!




