第四部 第五章
「何でも、息子の冒険者チームに敵国のスパイがいるかもしれないって話です」
「はあああああ? 」
いや冒険者にそういうのは無いだろう。
なんで、冒険者グループにスパイが入り込むんだよ。
「まあ、私もそう思います」
アリアーネ嬢が俺の顔をちらと見て、相変わらずのスキルコミニュケーターも無いのに、良くもまあ俺の心を読める。
「怪しい話じゃないのか? 」
「怪しいけど、ワッセナー商会自体が我が国の経済界にかなり入り込んでますからね。いろいろと断りにくいんですよ。うちのギルドとしても。それと、確かに神聖帝国に妙な動きがあるのは確かです。ほうぼうの国をいろいろと調べているとは聞きます。恐らく、ギルドキングダムと戦える国となるとカルマル帝国と同盟を結んだ今は、神聖帝国くらいしかなくなりますしね。」
そうアリアーネ嬢が話す。
「つまり、そういう政治的に断れないようにして、話をねじ込んで来たって事? 」
「まあ、そう言う事です」
そうアリアーネ嬢があっさり答えた。
となると……。
考えられるのは……。
スパイがわざわざこんな冒険者グループに関わって来る?
あり得ない話じゃないのかな?
「あ? ひょっとして、俺か? 」
俺がふと自分の事を思いついた。
「それを探りに来ているのかもしれませんね。ちょっと、昨日の騒動はあまりにも派手にやりすぎました。べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が貴方に執着していると言う概要は掴んでいるのかもしれません。流石に貴方のコードネームで探しすぎましたし」
「なるほどな」
アリアーネ嬢に言われて見れば非常に納得する。
「しかし、本当にそういう所は察しが良いですね。案外、有り得る話なのかもしれませんね。べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の夢は」
それはそれで俺にとっては重たい話だ。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が綺麗だけど怖すぎる。
それに、いくらなんでも、やりすぎだろう。
俺と彼女の世界とか……。
「まあ、頑張ってみてください。私は逃げられないと思いますよ。こうと決めたら必ず実現するのがベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下です。本気の本気ですからね。前からの執着していた事でもありますし……」
凄い小声でアリアーネ嬢が呟いた。
そう言われると非常に困るのだが、まあ監視まみれの状況でそれを俺に小声で言うのもリスクが大きいのに、それでも言ってくれるのはアリアーネ嬢なりの仕事仲間への忠告なのだろう。
そして、側近として仕えてきた経験からも来るのかもしれない。
ところで、それはそれとして、アンナさん、そろそろ俺を睨むのを止めてほしい。
ああ、パウルさん。
俺が言うのもなんだけど、その人は地雷だと思うよ。
そう、アンナさんにデレデレの顔をしているパウルさんを見て思った。
「で、いつ会うの? 」
「もうすぐ、ギルド前の喫茶店の前に馬車で来るはずなんで……」
そうアリアーネ嬢が言いながら手を挙げた。
そうしたら、<疾風>さんが入ってきた。
本当に俺の専属護衛になったようだ。
サポーター系の護衛騎士が着ると決まった黄色に塗られた革の防具を身に着けていた。
いやいや、これは目立つなぁ。
俺がその姿を見てため息をついた。




