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第四部 第四章

 アンナさんとパウルさんが少し離れた席に座った。


 一応、この場所が冒険者の憩いの場所の喫茶店だから、ここにいるなとも言えない。


 非常に困ったもんだ。


 こんな時にかち合うとか禄でも無いなと。


 アンナさんはこないだの事を根に持っているらしい。


 俺をじっと見て睨んでいた。


 いやいや、こないだまではか弱い立場を演じていたんじゃなかったっけ?


 本性はこちらか。


 まあ、グループ内で許嫁のいる相手に手を出して、しれっと入れ代わるとか、普通は出来ないものな。


 じーーーっと座りながらアンナさんが俺を見続けているので流石にうんざりする。


「困ったもんだな」


 俺が呟くと、アリアーネ嬢が状況を察して肩をすくめた。


「まあ、あんまり睨んだり嫌がらせまでしてくるようなら監視だらけですし、サクサク刺したからロザンネさんが追放されただけで、ああいう泥棒猫は嫌いでしょうからね。べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は……」


 アリアーネ嬢がため息をついた。


 この報告が上に行けば、何をされるかわからんのに。


 とりあえず、現状ではベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の暴君としての姿は殆ど知られていないから、それだけ側近のヘールツ伯爵の隠蔽が優れているのだろう。


「んで、依頼って何の話なの? 」


「ワッセナー商会の息子さんがだいぶ前に冒険者になったのはご存じですよね」


「ああ」


 ワッセナー商会と言えば、ギルドキングダムの最大の商会である。


 実際に近隣の国にも手を伸ばしており、最近ではギルドキングダムと同盟を結んだカルマル帝国にも大きく手を拡げていた。


 そして、ギルドキングダムで最後に敵になる神聖帝国までも関係があると言われる。


 神聖帝国のゼス皇帝こそ、ギルドキングダムの主人公と女王の最期の敵なのだ。


 ここまで商売で手を拡げれる十代目当主のディーデリック・カスペル・ワッセナーは中興の祖と呼ばれるだろうと言われるほどの出来る人物でまだ40代であるのに、ギルドキングダムの財界を取り仕切っているとすら言われている。


 実際に伯爵位を持っていて、商売も手広くやっていると言う御方だ。


 だから、正確にはディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵になるのか。


 恰幅の良い偉丈夫で普段から笑みを絶やさないとか。


 ワッセナー伯爵家の面白い所で、長男は伯爵を継ぐ予定で商会の跡取り、次男はギルドキングダムの高級官僚、そして末っ子が冒険者である。


 どこかの国で昔の話であるが、子供が三人あったら、役人、警察、ヤクザとバラバラに息子を割り振って一族の守りみたいにするのと同じセンスなのだろうか。


 その末っ子のフェリクス・カスペル・ワッセナーは本人自体はあまり強いとは聞かないが、周りを父の人脈で集めた優秀な人材で揃えており、それがプラチナグループの<ワールハイドゥ>である。


 しかし、真実(ワールハイドゥ)とか変な名前をつけるなとは思うが……。


「で? プラチナグループの<ワールハイドゥ>がどうしたの? 」 


「それが息子さんのフェリクスさんでなく、父親のディーデリックさんからの依頼なんですよ」


 そうアリアーネ嬢が答えた。


「はあ? 父親? 」


 いや、息子さんのフェリクスさんもすでに二十歳超えてたと思う。


 十六歳から十八歳くらいで一人前になる世界で、二十歳超えはもう子供では決してない。


 何だか、良く分からない依頼だなと思いつつ、じっと俺を睨み続けるアンナさんにも疲れるのであった。

   






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