第四部 第一章
そういえば、看護学校に入って、遠くの高校から彼氏についてきた彼女とかはチャラい連中はヤバいと言っていたな。
俺は一人でギルド前の喫茶店でコーヒーを飲みながら思い出した。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の詰問が終わって数時間が経った。
アリアーネ嬢とヘールツ伯爵はほっとしたような顔を一瞬していたが、その後はまた死刑台に行くような顔で客間に残っていて、俺は、そこからは離脱した。
処刑されただの噂は出ていないから、今回はどうにかなったのだろう。
それにしても、確かに、ヤバいわ。
逃げれそうにない。
まして、異世界転移を願うだけでしてしまうなんて。
しかも、ひょっとすると、この世界自体が彼女が作ったものかもしれないのだ。
尋常な力じゃない。
アリアーネ嬢がベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の事を、実行力が強く、こうあって欲しいと思うだけで実際に実現してしまうとか前に話していた。
まさか、そんなスキルがあるのだろうか?
神に近いじゃないか。
俺がぞっとした。
ふと顔を上げると少しと離れた所に、こないだの近衛の凄腕の手練れが二人ほどいて、俺と顔が会った途端に目を伏せた。
勿論、彼らは俺の監視兼護衛である。
目を伏せたのは別の理由だ。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は地味なオタクで実は腐女子。
よりにもよって、別れる時にこう言った。
「確かに、若い男の人に我慢ばかりさせるのは良くないかもしれない。だから、どうしてもと言う時には好みの近衛の人を使ってもいいから」
使っても良いからって何?
男同士なら構わないとか腐女子全開じゃん。
しかも、命令だったもんで、一斉にあの場にいた近衛の手練れだけでなくヘールツ伯爵まで尻を両手で塞ぐような仕草をした。
んで、カチンと来たベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が必ず旦那様に呼ばれたらお相手をしなさいと近衛の騎士達は厳命されてしまった。
結果として、護衛はそういう意味でのリスクがある仕事になった。
それで、呼ばれたくなくて、俺が見るたびに目を伏せる。
それだけでなく、困ったことになった。
この世界で間違いなく人間がやってはいけないことを進藤結衣はしようとしている。
作者だから許されるのかもしれないけど、この世界の人間がそれによって、たくさん亡くなるかもしれない。
真面目に偽物とは思えない世界なのだ。
だから、全ての人間は生きいると言っていいと思う。
作品の中で女王と主人公が全てを支配する段階で物語で大量の兵士たちが戦争で亡くなっていた。
それをなんとかしないといけない。
この世界の人間がそれによって大量に亡くなるのだ。
それを阻止しないといけない。
だから、手練れでベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の側近である近衛の彼らこそ、相談したりするのに最高なのに。
これでは会話が出来ない。
しかも、手練れだけあって対策は完璧だ。
さっきは全員がスラリとしてピシッとした恰好をしていたのに、今は護衛なのに浮浪者みたいに汚い恰好をしていた。
服は近衛騎士の制服だが、よれよれで汚れがついている。
俺に相手をしてと言わせないように必死だ。
実際、プーンと汗くさい匂いと腐ったゴミのような匂いがしてる。
服にいろいろと擦り付けて来たんだろう。
切ないくらい必死だ。
喫茶店側もベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の側近で権勢を誇っている近衛には何も言えないみたいで、その匂いなどから凄い顔をしていた。
心配しなくても、俺はその手の相手なんか絶対に頼まないのに……。




