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第三部 第十六章

 そうして、アリアーネ嬢だけでなく、皆を見たら全員が俺の行動に、ほっとしつつもあっけに取られた顔をしていた。


 <疾風>さんなど俺達が異界から来たって話だけでポカーン状態である。


 後で調べてみないと分からないのだが、さっきの地震の揺れがおかしすぎる。


 そもそも、こんな風に、あのライトノベルとそっくりな世界が存在するはずがない。


 言われるまで気が付かなかった、俺もうかつだが、貧乏な騎士階級の下位の人生なんて描写されてないから仕方あるまい。


 しかし、今、言われて気が付いた。


 ライトノベルのギルドキングダムはある冒険者が主人公で立身出世していく話だ。


 話の展開だと、そいつはしがない冒険者をしていて、ギルドキングダムの女王陛下に見いだされて、取り立てられて……そして出世して、いつしか……あれ? 


 これ、俺の事じゃね? 


 でも名前が違うぞ。


 それに、主人公は単なる冒険者だったはず。


 俺みたいに騎士階級では無く、もっと貧しい階級からの冒険者だったはず。


 ふぁぁああぁぁあぁぁ?


 まさか、ルートとしてベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下と結婚が未来にあるのか? 


 いやいや、いくら何でも庶民では無いが騎士階級の末席出身の冒険者が女王陛下と結婚できるわけがない。


 それを教えて諭さなければ。


「あの、君の気持ちは嬉しい。俺も君に会いたくて無理を言ってしまったと思う。だが、この世界には身分制度がある……」


 俺がわざと沈痛な表情で呟いた。


 少し必死だった。

 

 だって、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が凄く怖いもの。


「それなら大丈夫よ。秘密裡に進めてきたけど、貴方は子供のいないジーゲン公爵家の養子になるの」


「は? 」


 俺がべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の言葉に震えた。


「そうして、ジーゲン公爵として私と結婚するの」


「ええ? 」


 俺が呆然としていた。


 まさかの結婚ルートが生きているのだ。


 そういや、貴族階級の子供のいない家に養子で入って主人公は女王陛下と結婚してたよな。


 待て待て、え?


 どういう事? 


 俺があの作品での主人公ポジションにいるわけ?


 いやいや、待て待て王家間の関係が色々ある世界だ。


 日本の江戸時代のように養子縁組で大丈夫と言う世界ではないはず。


 でも、そう言えば、そういうのをひっくり返して女王陛下と結ばれるのがルートだったよな。


 ええええええええ? 


 まさか、そう言う事なの?


「待って……他国の王家が自国に関わりかねない騎士階級の末席のようなゴミが王位につくなど、王家の簒奪に近いことを許すはずがない。身分制度はこの世界では、それほどまでに重いはずだよ? 」


 でも、などと言いながら、それでも女王陛下と主人公が結婚したのがギルドキングダムの物語だった。

 

 作者の進藤ケメコっ! 


 いい加減にしろやぁぁぁ!


 そして、俺は目の前で起こる現実を知る。


「大丈夫、すでにカルマル帝国とも同盟を結んだわ。私が何のためにこの国の軍事力を増強させていると思うの? 全ての王家の上に私達が君臨すればいいの。この世界は私と貴方の為に出来たものだから……」


 俺が震えてべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下を見た。


 正気だった。


 いや、少し目に狂気が見える。


 まさかと思うけど、この世界って……。


「あの……ギルドキングダムの作者の進藤ケメコって……」


「そう、わ・た・し。……だから、貴方があのライトノベルの話をしてくれた時に凄くうれしかった」


 俺は呆然として立ち尽くした。


「だから、貴方は他所の女とかに手を出さないで、ここは二人の世界なんだから、他の女なんか見ちゃ駄目。だから、もう少し待ってね。私達はこの世界の支配者として君臨するのよ。貴方が私を呼んだように」


 べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は頬を染めてそう話した。


 いや、貴方でなくて俺が呼ばれたんだと思うと思いつつ。


 その時、前世の事を思い出した。


 わざわざ故郷から遠い大学に入った彼氏を追いかけて、近くの看護学校に入学して引っ越ししてまでして、ついてきた彼女の話をだ。


 俺は凄い愛し合っているカップルなんだなと感心した。


 だが、チャラい奴等は言っていた。


「やばい、危険だ……」


「そこまでして、彼氏についてきた彼女が実はヤバい性格を持っていた場合、男の方が逃げ切る事は出来ないのじゃないのか」


 あのチャラい連中の2つの言葉が頭の中をくるくると回った。


 ずっと回り続けていた。

 

 この現実が……。

 




 

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