第三部 第十五章
「その時、私は理解したわ。私は貴方が好きだったの。それであなたが冷たくなっていく中で、何もできなかった自分が悔しくて泣きながら救急車を呼んだわ。それで貴方を支えて抱き続けたの。そうしたら、貴方は私にあの運命の言葉……アチアチカップルのアニサキスと呟いたの」
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がそう嬉しそうに話す。
「は? え? 」
俺が震える。
「私は貴方が亡くなった後にずっとそれを考え続けていたわ。このアチアチカップルのアニサキスって何の事なのかを……。そしたら、貴方と良く話したライトノベルのギルドキングダムの話を思い出したの。この言葉は私とギルドキングダムの世界で再会するための符丁の言葉では無いかと。そう、その時に気がついてしまったの。貴方が私を呼んでいると……」
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が熱に浮かされたように話し続ける。
いや、ギルドキングダムってたまたま名前が同じだけで、全然違う話だよね。
それまでは、そう思っていた。
でも、よく考えると、確かにここは、あのライトノベルのギルドキングダムの世界なのだ。
言われてみれば……。
あまりにそっくりなのに全然気が付いて無かったぁぁぁ!
どういう事?
しかも、符丁って……アニサキス野郎と言われて思わずアチアチカップルのアニサキスって呟いただけだし。
「私は貴方が私を呼ぶ、このギルドキングダムの本の世界に来るために祈り続けたわ。強力に祈りを捧げ続けたの。何としても貴方と私の世界に行くために」
「へ? 」
俺がさらに震える。
まさか、祈りでこの世界に転移して来たと……。
いや、あれは想像の世界だから、現実には無いはず。
そう言えば、さっきのベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の憤怒でこの客間が地震の様に揺れていたな。
まさかと思うが、それで城も揺れていたのか?
どういう事だ?
「そうしたら、来れたの。この世界に。貴方と私が幸せになる世界に。私はこのギルドキングダムと言うあの物語と同じ名前の国家の王女に産まれたわ。しかも、ギルドキングダムと話が物凄く似ていた。これは運命だと思ったわ。そして、私は貴方を探したわ。ひょっとしてって候補を見つけたの。それがレオン、貴方なの。そうしたら、貴方はコードネームで誰にも分からないように、あの符丁を使ってくれた、アチアチカップルのアニサキスと。……私に知らせるために」
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が涙を流すかのように俺を見た。
あんぎゃあああああああ!
いや、無いだろ!
たまたまだよ!
って思ったら、俺の心が読めるアリアーネ嬢が会ってから一度も見たことが無い顔をした。
そして、両手を組んで震えながら祈りを捧げだした。
ヘールツ伯爵が妹の顔を見て事態を察したのか、鳥が締められた以上の顔になった。
つまり、俺が否定をしたら皆が終わると言いたいのか。
仕方あるまい。
腐ってもゴールドサポーターでテンフィンガーのアチアチカップルのアニサキス。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の欲しい言葉は分かる。
「分かってくれたんだね」
そう俺がべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に微笑んだ。
これがどこまでも続く泥沼になる事を理解しながらも。
「やっぱり」
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が涙を流しながら俺を抱きしめた。
冷静に一国の女王様に良いのだろうか?
と思いつつ、アリアーネ嬢の顔から俺の取るべき立場を懸案して、仕方ないのでべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下を抱きしめた。
そして、絶対にあり得ないはずのギルドキングダムの世界がここにある。
先ほどのベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下と連動するような地震の揺れと言い、これは一体何なのか?
とはいえ、今はしょうがないよな、とほほ。




