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第三部 第十三話

「まあ、分からないわよね。私はすぐに分かったんだけどな」


 そうべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がもじもじしている。


 俺が良く分かんないので、軽くスキルコミニュケーター使ってアリアーネ嬢とかを見ようとしたら、見るまでも無くアリアーネ嬢が、てめぇ、分かってやれよって顔をしているのに気が付いた。


 ううむ、確かにアリアーネ嬢と付き合いが長いせいか確かにスキルコミニュケーターがいらんな。


 となると、べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の本音も同じ感じなのだろう。


 で、誰なんだろう。


 間違いないのは俺と同じ転生者だという事だけだ。


 誰だっけ。


 マジで悩んだ。


「しばらくの間しか付き合いが無かったものね。私は進藤結衣(しんどうゆい)よ」


 そういじらしいほどべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が少し赤みがかかった頬をして笑った。


「え? 」


 俺が唖然として驚いた。


 非常に困った事に、名前を聞いても誰か分からなかったのだ。


 そういえば、絶対にモテたかったら、女の子の名前と顔は暗記しろってチャラい連中が言ってたな、などとぼーっと考えていた。


「ちょっと、すいません」


 アリアーネ嬢がベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下にそう言うと俺をヘールツ伯爵と一緒に衝立の影に引きずり込むように連れて行った。


「乙女の心を何だとおもってんだぁぁぁぁ! 名前と顔くらい覚えとけやぁぁぁ! 」


「お前、一応、最強のテンフィンガーなんだろ? ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に話を合わせるくらいしろやぁぁぁ! 」


 べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下から見えない場所にいって、声を必死に殺しながら怒鳴る二人を見て、俺はなるほど兄妹なんだと感心していた。


「分かってんの? 」


「お前、下手したら……何人か……下手したら……今回の責任を取って、俺も含めて行方不明になって死ぬんだぞ? 」


 などと必死だ。


「死ぬ? 何で? 側近なんですよね、ヘールツ伯爵は……」


「お前にいろいろと言えないぶぅんんん、近衛とかの奴が八つ当たりされるんだよぉぉぉぉ! 」


 必死に互いに声を殺しながら話し合う。


 ちらと陰から見たら、近衛の手練れが全員真っ青になってた。


 それどころか、あの凶暴なアマゾネスまでだ。


 昔見た造反した貴族が処刑台に上がった時の姿を思い出した。


 造反した貴族の首ちょんぱされる寸前の顔にそっくりだ。


 死を間近に感じた奴の恐怖が張り付いた顔だった。


 まさかのベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は暴君だったんだ。


 戦歴は凄かったが、身内に対してまで怖いとは思わなかった。


 徹底的にその情報は隠蔽しているんだなと驚いた。


 確かに強力な専制君主だとは思っていたが……。


 この怖さこそが、皆にそうさせていたのだ。


「とにかく、これはいつもの交渉事だと思って、それだけはちゃんと把握して話をして。後、スキルコミニュケーターはべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は勘が凄いから気が付かれるとまずいからあからさまには使わないで。非常に危険だから……後で当たられる私達が……」


 そうアリアーネ嬢が声を殺しながら必死だ。


 危険なのは俺じゃ無いんかーい!


 ふと、良く見たら驚いたことに皆さんが分からない程度でコクコクと頷いている。


 俺の返事次第では、彼らは地獄に変わるのだ。


 これは本当に驚いた。


 スキルコミニュケーターを使わないでも、彼らのベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下への恐怖がありありと分かった。


 


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