第三部 第十二話
「貴方に話をするのはもう少し先にしようと思ったのにな……」
目の前で悩まし気な顔でべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が呟いた。
なぜか、俺はベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の外国の賓客と会う時に使う特別な客間に<疾風>さんと招かれていた。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の傍には側近のヘールツ伯爵とアリアーネ嬢が控えていた。
顔つきは歪んだままである。
そして、俺をじとっと睨んでいた。
その客間は俺なんかの小金持ちが見た事のがない高価な調度が並んでいる。
飾ってある絵画の1つでも俺の年収の10倍以上ありそうだ。
俺は高級官僚で、高級取りだが、そんな俺でも見たことが無いくらいのものが並んでいるのだ。
そして、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がじっと俺の目を見ていた。
確かに恐ろしいがこれほどの美女の王族は世界にいないだろう。
何しろ、即位後に最初の二年くらいは求婚が凄かった。
だが、隣国と揉めて若い女王だてらに自ら剣を取って相手の将軍を葬るなど、凄まじい武勲を挙げてからは流血のべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下と呼ばれて求婚は激減した。
<疾風>さんによると昔から武の方面が凄く雷撃のベアトリクスと呼ばれていたらしいが、さもありなんである。
それほど、元々武神のように強かったらしい。
最強の戦神とすら呼ばれていたようだ。
今、そのべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が目の前にいる。
それも、妙に俺には優しい顔で。
「アチアチカップルのアニサキス」
「ははっ! 」
慌てて、俺がその場に跪いた。
「貴方はもう少し童貞でいなさい」
そうべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が自らおっしゃった。
そうしたら、横のヘールツ伯爵とアリアーネ嬢ががさらに首を絞められた鳥の様に凄い顔をした。
ええええええええええええええええええええええ?
本当に童貞なの?
俺の童貞が問題なの?
俺が激しく動揺した。
ギルドキングダムの20万の全軍を動員して、結果が、まさかの本当に俺の童貞かよ。
いや、いくら何でも、それはどうなの? と思った。
「おおお、陛下。では、彼が童貞のまま時間が経てば、魔法使いになれると言う彼の生まれ故郷の話は本当だったので? 」
そう<疾風>さんが感動して話す。
べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下がその美しい眉を上げて、アリアーネ嬢とヘールツ伯爵を見た。
どちらも、さらに歪んだ凄い顔をしていた。
「ち、違うので? 」
<疾風>さんも重苦しい空気を感じて動揺していた。
「やっぱり、説明しておかないといけないのかな? 」
そうべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が悩まし気な顔をして俺をじっと見ていた。
「あ、いや、童貞を40年続けると魔法使いになれると言うのは私の故郷の話でして、特に意味は無いんですが……私の童貞に何かあるのかと思いまして……」
俺が動揺しまくりで答える。
「相変わらずね、椎原要君」
そうべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が微笑んだ。
「え? 」
俺が前世の名前を言われて唖然とした。
こちらの世界には絶対に無い名前なのだ。
「私が誰か分かる? 」
そういたずらっぽくべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が笑った。
「分かりません」
俺が即答した。
それでちょっとカチンと来たのかべアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の顔が強張った。
それによって、アリアーネ嬢とヘールツ伯爵がアチアチカップルのアニサキスのボケがぁぁぁぁ! と発狂しそうな顔をしていたが




