第三部 第七話
「いやいや、すまん。あまりに答えが意表をついていてな」
そう<疾風>さんが済まなさそうに頭を下げた。
いや、思いっきり転げまわって爆笑された後で言われてもと思ったが黙っていた。
「他に思いつく事は無いのか? 」
「いや、別に。反逆なんかしたこと無いですし」
「他所へ移ろうとしたとかもか? 」
「はい。考えたことも無いですね。そりゃ、貯金が出来たらアーリーリタイヤじゃないけど、そういうのを考えるかもしれませんが……」
「では、なんだろうな。近衛の将軍を知っているか? アドリアヌス・ラウレンス・ヘールツ伯爵だ。べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に見いだされて、いわば一番の側近であるヘールツ伯爵とは実はわしは何度も会ったことがあるが今日は首を絞められた鶏みたいな顔で追い詰められてるのか、無茶苦茶殺気立ってお主を渡せと秋月の入口で威圧して来た。目が血走っていて物凄かったわ。普段は沈着冷静なのにな」
「マ、マジですか? 」
「べアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下のアマゾネスと近衛とテンフィンガーは三大側近で直属の部下だと言われている。だが、わしは近衛とアマゾネスの次くらいの扱いかと思ってたんだがな、テンフィンガーは……。だってあまり執着しているように見えなかったし。良くいろいろと業務で冒険者に刺されたりしてメンバーが亡くなって入れ替わったりするからな」
そうなのだ。
結構、死んでいるんだよな。
テンフィンガー。
あまり長くやっていたいとは、それで実は思ってないのだが……。
「正直、私はギルドの最高幹部とかの方がベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下に近そうに見えますが……」
「いや、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が即位と同時に組織したのがこの三つだ。それだけ思い入れがあるはず。それで、一番の凄腕のアチアチカップルのアニサキス絡みと言われれば、まさかの造反あたりかと思ったのだがな。我が国はベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下になられて敵が多い。とにかく、足を引っ張りたい国が多いからな」
「いや、実は……ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の直属の暗殺組織のアマゾネスからはすでにドウテイヲステルナと警告はされてるんです。それで、ちょっと意地になっちゃって……」
「どうていをすてるな? どうていって……童貞だよな……童貞って、ええええ? 童貞を守るために動いてるのか? アチアチカップルのアニサキスの? ええ? 童貞だと言うのか? ギルドキングダムの全軍が動いているのに? 童貞? 」
<疾風>が凄く驚いたような顔で、繰り返す。
いやいや、アチアチカップルのアニサキスと同じくらい童貞って続けて言われるの恥ずかしいんだけど。
「童貞を捨てなければ魔法使いになれると……」
俺がそう続けた。
「なんじゃそれは……」
「私の生まれ故郷の言葉なんですが……」
「それは無いわぁぁ」
そうしみじみと<疾風>さんが呟いた。
「ああ、やっぱりそうですよね」
「聞いたこと無いし。わし、ここだけの話、童貞だもの」
そう<疾風>さんが重たい話をしだす。
「え? 」
「昔、若い時にモンスターとやり合った時に金玉斬り落とされちゃってな。それ以来立たないのよ」
いきなり<疾風>さんの話がさらに重たくなった。
「いや、それは大変ですね」
「まあ、しょうがないんだけどな」
そう<疾風>さんが豪快に笑った。
やはりそうなると童貞でも魔法使いにはなんないんだな。
そうしみじみと思った。
じゃあ、なんで?
正直、アマゾネスの話も訳が分からない。




