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第二部 第二話

「本当に落ち込むほど変更したいんですね」


 そうアリアーネ嬢が苦笑した。

 

 当り前じゃないかと思う。

 

 誰かばれたら駄目なのがテンフィンガーじゃないのか。


 極秘の監査役だし。


「これだけの問題が出てるから、コードネームの変更を受け付けてくれると思ったのに」


「まあ、しょうがないですよ」


「俺はこの仕事も辞めたいですよ」


「あ、それも駄目ですね」


「は? 」


「いやだから、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下の大のお気に入りなんです。貴方は」


「えええええええ? 」


「前、陛下に彼が逃げたらどうしますってそれとなく聞いたら、国家として軍隊を出して追うって言ってました。正直な話。何か表に出たらまずいような大きな騒動に巻き込まれて、我がギルドキングダムの秘密を知ってしまったとか……あ、無いですね。その顔だと」


 まるでスキルコミニュケーターでも持っているかのようにアリアーネ嬢が俺の顔を見て苦笑した。


「いやいや、なんで? 」


「私もそこに興味があるんですけどね。本当にあなたに関しては陛下は融通が聞きませんよ。何かどこかで子供の時に付き合いがあったとか……はい……無いですか。愛を裁くものって言われてるのに、愛とは無縁ですもんね」


「酷いっ! 」


 俺が悔しくて袖を噛んだ。


「まあ。見てて分かりやすいし、善良なのは良い所ですけどね」


「過剰な地雷のような恋愛問題が出たらほったらかしで逃げたりしますけどね」


「いや、貴方の報告を聞いてたら、多分、私も同じことしますもの」


 そうアリアーネ嬢がクスクスと笑った。


 ナンバーワンギルド嬢がテンフィンガーのナンバーワンらしい俺と同じ考えだと言う、この救いの無さよ。


 にしても、本当なのかなぁ。


 しがない騎士の末席からの冒険者にこのギルドキングダムの頂点の女王が固執しているとか、あり得ないと思うけど。


「まあ、その手の泥沼な話はここまでにして、早速依頼なんですけどね」


「いや、依頼って言いました? 今回は調査じゃないんですか? 」


 俺の顔が歪む。


 大体、依頼とかは冒険者間のいざこざとかだからだ。


 勿論、このいざこざの解消もサポーター制度の大事な柱だし、テンフィンガーとしても冒険者のレベルアップを図る意味で大切なのだが。


 何故か知らないが、俺の話は酷く厄介な話が多い。


「愛を裁くものにぴったりの話ですよ」


「俺が愛とは無縁って知ってながら、良くもそんな依頼を持ってきますよね。それなら<トゥルーラブ>がいるでしょ」


「ああ、彼、こないだ依頼者に矢を射かけられて瀕死の大怪我してますよ」


「矢? 」


「ええ、弓を扱う冒険者と揉めまして、相手は女性ですが。帰り際に背中からぴゅんぴゅんぴゅんですよ」


「1本じゃないんですか? }


「3本です」


「殺す気満々じゃないですか」


 かっとなって手にしたナイフで刺すのでは無く、矢を連続して射るとか殺す気でないと無理だろ。


「相談男をやりすぎたみたいですね」


 そうアリアーネ嬢が苦笑した。


 全然、笑えないし。



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