第二部 第一話
「今日こそは、ちゃんとお願いしなくては……」
そう俺が巨大なギルトの受付がある国会議事堂みたいな会館の横の喫茶店の椅子に座って決意表明みたいに呟いた。
何としてもコードネームの<アチアチカップルのアニサキス>の名前を変更してもらうのだ。
流石に、今までは却下されたが、今回は別だ。
何しろ能力とともにコードネームがモレモレしている。
こんなのがばれたら極秘の監査役としても終わりだ。
仕事になんねぇよ。
その上に、凄腕ってなんだ?
本来は監査役で地味な小役人みたいな仕事なのに、そんな大げさな評価いる?
おかしいよね。
絶対おかしいわ。
監査役が仕事なのに、変な案件ばかり来るからこうなるんだ。
そもそも、痴話げんかで滅多刺しにされて死んだのに、何よ、愛を裁くものって。
こんな事になってたら、本当に俺はこの世界で、またまたサクサク刺されてしまう。
全てはあの時の和貴に言われたアニサキスと言う言葉から来てるのだ。
あんなヤリチン野郎にいろいろと言われたせいでこうなるとか冗談じゃねぇや。
俺は童貞なんだぞ!
彼女も出来たことがねぇや。
前世と合わせて40年近いんだ。
かんべんしてくれよ。
「とにかく、コードネームだけでも何とかしなきゃ」
そう俺が決意をみなぎらせて手を握り締めた。
「どうかしたんですか? 」
アリアーネ嬢がそう聞いてきた。
何だか知らないけど、いつも微妙な時に声をかけてくるよな。
俺がそうため息をついた。
「悩み事ですか? 」
「ええ、実はコードネー……」
「駄目です」
そこまで言ったところで、冷やかにアリアーネ嬢に駄目だしされる。
「なんでですか? 私の能力まで漏れてたんですよ? 」
「それは公国の情報部にでしょ? 」
「あろうことか。私が凄腕とか」
「いや、一応、ギルドキングダムではそういう評価ですよ」
「そんな馬鹿な」
と言いつつ微笑んでしまった。
やはり俺は小市民。
騎士階級の末席だけあって、良い評価を貰うと嬉しいのだ。
「嬉しそうですね」
そうアリアーネ嬢がクスクス笑った。
「いや、それはそれで……。とにかく、今の名前のままと言うのはですね……」
「とにかく駄目です」
「なぜに? 」
俺があまりのアリアーネ嬢の頑なな態度に驚いた。
「うーん……。……内緒ですよ? 本当にここだけの話です……」
そうアリアーネ嬢がいたずらっぽく笑う。
「なんなんです? 」
俺が不思議そうに聞いた。
「実はこのコードネームはベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下が大のお気に入りなんですよ」
「はあああああああ? 」
俺があまりの話に驚いた。
どこがお気に入りなんだ。
こんな気持ち悪いコードネームの。
「まあ、私もどうかと思うんですけどね。でも、これ本当なんですよ。だから、今後も変更は無理だと思いますよ」
「そんな馬鹿な……」
俺があまりの話に唖然とした。
こんなみっともないコードネームとかおかしいだろうに。
「いや、でも、誰かばれているんですから」
「我慢してください。そもそも、それに決めたのは貴方なんですし」
などとアリアーネ嬢がきっぱりと言い切った。
そう言われたら言い返せないや……とほほ。




