第九部 第六章
「となると、恐らく、お前がギルドキングダムに現れる伝説の勇者なのだろうな」
それで和貴……ゼス神聖皇帝が納得したような顔をした。
「えええ? 」
「はあああ? 」
物凄い騒めくような騒ぎが拡がる。
そうなのだ。
ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は簡単に言ったが、ギルドキングダムの勇者とはそれだけ特別な存在なのだ。
あらゆるものを退け、巨大な魔物を払う。
この世界に出てくる恐るべき災厄を退ける偉大な存在が勇者。
これはギルドキングダムの作品の神話にいずれ現れる偉大な神の使徒として描かれている存在なのだ。
まあ、普通はそういう感じだけどさ。
でも、ギルドキングダムはその災厄である最大最悪の魔物が出てきて伝説である勇者の主人公と死闘をしている時に、ボロボロになったギルドキングダムを背後から襲うのがラスボスである神聖帝国のゼス皇帝なのだ。
だから、ギルドキングダムでは間違いなくラスボスはこいつ。
和貴じゃねぇやゼス皇帝になる。
しかも、最大最悪の魔物も実はゼス皇帝のせいで表に出てくる。
それはギルドキングダムの極秘ダンジョンの奥からゼス皇帝の策略によって出てくるのだ。
だからこそ、現状では、ギルドキングダムの特別な戦闘部隊1万を組織して防御させて、そこをベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は誰も入れないように封鎖している。
そういう対策をしているものの、こいつがギルドキングダムの内容を知っているというのは悪夢でしかない。
まさか、ギルドキングダムの小説を知っているだけでなく、そこまで読みこんでいたとは。
だからこそ、いろいろと筋が分かるのだ。
特に俺が勇者のポジションにいる事も。
「マオエユウシャナノカ? オマエユウシャナノカ? オマエユウシャナノカ? 」
などと、あのリリーが目をキラキラさせて話す。
それほどの偉大な存在としてギルドキングダムのみならず、この世界全てで語られているのが神の使徒として現れる勇者だ。
実は神聖帝国もその勇者を待つ宗教の一つであるのだ。
だから、ギルドキングダムでは途中まで同じ勇者を守る味方のはずだった神聖帝国が実は黒幕だったという驚きの展開になるのだが……。
マジで神聖帝国の護衛すら目をキラキラさせて俺を見る奴もいる。
参ったな。
「なるほど、それでゼス皇帝自らがアチアチカップルのアニサキスを探しておられたのですな」
「おお、そういう事だったのか。道理で怪物と呼ばれるわけだ」
神聖皇帝の執事のような子供から傍にいるとかいう老執事のような神官が驚くとヨハネスまで衝撃を受けていた。
「いや、光の力なんて出てないから」
俺がそう言って否定する。
出てないものを出ているというのは大嘘になるし。
「いや、間違いないだろう。進藤ケメコ……いや進藤結衣の気持ちは読める。今はベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下になっているんだろう? 」
「はああああ? いや、お前、 別に親しくなかっただろう? 話もほとんどしてないはずだ。進藤結衣には無茶苦茶に嫌われてたし」
俺が驚いて突っ込んだ。
「あの作品の後書きを読んでないのか? 」
「ふあっ? 後書きだと? 」
まさかのゼス神聖皇帝……和貴から言われて怯む。
そんなわざわざ後書きなんて、俺は読まない性格だし。
「これは私の夢の物語です。私も勇者のような人に守られてみたい…・・・みたいな夢見る乙女のような事を書いてた」
「えええええ? 」
これはまた、言わないけど、そんな事を書いてたんだ。
何、その乙女心。
全然、そんな雰囲気は現在には無いんだけど。
衝撃過ぎて、震える。




