第九部 第七章
「ベアトリクス・フォン・アレクストジョウオウヘイカハ、ソンナフウナジンブツデハナイゾ。ナニカマチガエテイルノデハ? 」
誰もが言うのを憚られることを、まさかのリリーが言ってしまう。
<疾風>さんもあーあーって顔している。
そういうのが漏れ聞こえると殺されるような目にあわされるだろうし。
「いやいや、それは無いわぁ。そんなタイプじゃないし。いや、そんな事は無いと思われますが」
などと、本音で同じように言ってしまったクンラート・パウエル・ローデヴェイクがゼス神聖皇帝に気を使って、途中から丁寧な言葉に変わる。
「ちょっと考えにくいと思いますが……」
などと察しのいいヨハンネスも否定的だ。
「お前はどう思うのだ? 」
「いや、俺は真面目に勇者ではないと思うんだけど? 」
身も蓋もないが本音で話す。
そりゃ、進藤結衣は創造者かもしれんけど、俺はそんな大層な人間でないし。
「なるほどな。お前は自分を大した人間じゃないと、いつもの如く過小評価しているんだろう。あの進藤結衣……いやベアトリクス・フォン・アレクスト女王の気持ちはわからないようだな」
「ベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下は自分一人で勝っちゃいそうだろ? 大体、お前だって、進藤結衣のタイガースープレックスで死んでるじゃん」
「なるほどなるほど。なんの技かわからなかったのだが……おいおい、殺す気満々じゃねぇか! 」
「だから、そういう性格で守られたいって無いだろうよ」
「ダメな奴め。違うのだよ。なんでこんな世界を作ったか理解してないのか? 」
「は? お前もそう思うのか? 進藤結衣が作った世界だと……」
「あの子はそういう特殊な家の血筋だ 」
「え? 知っているのか? 」
「ある宗教の神の子みたいな存在らしい。なろうは気晴らしで書いてたんだと思う。そこの教団でいろんな不思議なことをしていたらしい」
「何で……そんな事を……知っているの? 」
俺が少しびびる。
「大学の全女子生徒の細かい来歴まで調べていたから、大体、みんな知っている」
「怖っ! 」
「そのくらいして初めて、モテ男となるのだ」
などとまたしても神聖帝国の面々をざわつかせる。
「いや、俺に死なないで欲しいと思ったんじゃないの? 」
「お前の想定は、そこだけか? 甘いな」
「甘い? 」
「見立てが甘い。彼女はこう思ったのだ、お前に生き返ってほしい、それと同時にお前に自分を守ってほしいと」
「いや、それなら……そうかもしれないが……しかし、それだと……」
そう言って和貴……ゼス皇帝を見た。
「そうだ、俺がここで生きていることが分からない。だが、ベアトリクス・フォン・アレクスト女王を見て性格を考えるとわかる。彼女はお前自身に俺に対しての復讐をさせてあげたいのだ」
「はああああ? 」
そう思いつつもあり得ると思ってしまう。
「お前を殺した俺を許せないとともに、お前に自分自身の仇を取ってほしいのだ。勇者はそういうキャラクターだったろ? 」
「え? 」
そういえば、勇者はそういう性格だった。
仲間の仇を必ず討ち、そして、自分にやられた悪行などは必ず相手に報いを味合わせる。
え?
だから、自分の仇をとれと……。
「ひょっとしたら、もう少し夢はさらに上かもしれんな。結婚式場で俺を二人でケーキ入刀ではなく、首チョンパとか……。テープカットならず、首カットとか……」
それでゾッとした。
そっちの方が今のベアトリクス・フォン・アレクスト女王陛下を見るとあり得るからだ。
えええええええ?




