第八部 第九章
「嘘だろ? 」
低い声が第一階層に響いた。
ヨハンネスが上がって来た所で、<トウルーラブ>が<剣鬼>を斬り倒す所を見てしまった。
「く、糞っ……」
流石の<剣鬼>は身を捻る事でどうにか致命傷を避けていたが、もう戦えない。
それだけの傷を負っている。
そして、意味不明のダンスは傭兵もしたことがある<疾風>さんなら、その凄まじい技の積み重ねが分かると思うが、リリーですら訳が分からんのに、一級の冒険者ぐらいでは分かんないだろう。
「ええええええ? 」
「あんなのに、負けるんだ」
他の<ワールドハイドゥ>の連中から酷い言葉が出た。
でも、<剣鬼>の強さは知っているから全員が流石に馬鹿にするような感じは見えない。
<トゥルーラブ>に撒き散らされた花火の火が消えた。
長いように感じていたが、ほんの1分程度の戦いだったようだ。
「なんだ、あの格好……」
孔雀の羽根ようなパラシュートと花火をまき散らし終わった<トウルーラブ>の姿を見て、何か見てはいけないものを見たような顔で<ワールドハイドゥ>の面子はこちらを見ていた。
「キモッ! 」
リザがそれを見て叫ぶ。
あーあーあー、まあ、普通はそう思うよね。
「やれやれ」
そう<ワールドハイドゥ>の中で腕に覚えのある奴がこちらに近づこうとした。
「行くな! 危険だ! <トゥルーラブ>は<アチアチカップルのアニサキス>に精神コントロールを受けているらしい! <トウルーラブ>のこちらに対する反応が大人しすぎる」
ヨハンネスが慌てて<ワールドハイドゥ>のメンバーを止めた。
「ええええ? <トウルーラブ>ですぜ? 」
「そうか、忘れていた。<トウルーラブ>は<剣聖>の唯一の弟子だ。テンフィンガーに選ばれたのもその強さのせいだったな」
ヨハンネスが低い声で舌打ちした。
やはり、ヨハンネスも忘れていたらしい。
<トウルーラブ>が相談男を続けて女の子を引っかけて、何かが違うと捨ててと言うのを繰り返したばかりに、実は、それだけの人物だったのは忘れさられてしまっていたようだ。
「えええええええ? 」
「あいつ、<剣聖>の弟子なの? 」
<ワールドハイドゥ>の面子の驚きが伝わって来る。
まあ、そうだよな。
この世界は日本人である進藤結衣が作った世界だ。
だから、考え方が日本人っぽい。
武道をしている奴は凄く人格的に立派だとか、そういう幻想がある。
まあ、アメリカなんかでも西部劇時代のガンマンにそう言う風な憧れがあるからあるのかもしれないが、日本人は特にそう言う考えだ。
でも、武道家でもクズはクズなんだよと。
アメリカの有名なガンマンもだまし討ちばかりだし、新選組とか人斬りも意外と卑怯でえげつなかったり、そんな風に武道家たから人格が優れていると言うのは無いのに、なぜか思っちゃうからな。
だから、この世界も同じような感じだから、女に手を出して、背中から矢を射られて重症とか話が拡がっていくと、その<トゥルーラブ>の本来の剣の実力すら忘れ去られてしまうと言う事だ。
「くそっ、しまった」
ヨハンネスの誤算が大きい。
つまり、最強の剣士をこちらに渡してしまったのだ。
<剣鬼>は傷もあるが、精神的ショックから動けないようだ。
自分で太い血管を押さえて血止めだけして呻いている。




