第八部 第七章
<剣鬼>だけでなく<疾風>さんもリリーも呆然とそのダンスを見ていた。
まるでスペインのフラメンコのような、そして背中のパラシュートみたいなのが孔雀の羽根のように見えて、その求愛のダンスに見える。
いやいや、これを記憶で見た時は俺ですら固まったもの。
いるんだよ。
世の中には想像を超えた奴って。
「これが? 」
「そう、シャルロッテ様への求愛ダンス」
「ななななな、なんで、そんなもののはずなのに隙が無い? どういう事だ? これはっ! 」
<剣鬼>が動揺していた。
そうなのだ。
そこが恐ろしい所なのだ。
「ずっと<剣聖>に鍛えられてた剣術の基礎も練りこまれているから隙が無いんだよ、このダンス。しかも、どうやら、<剣聖>が最後に練りに練っていた技のエッセンスが注がれているらしくて、求愛のダンスなのに<剣聖>の最後の技が流れで入るんだ。だから、それが分かる人には分かるのかもしれない」
まあ、俺にはさっぱりわからないレベルの話だが。
何しろ、その変な動きの意図する所がさっぱり分からなかった。
その最後の部分を使う前に<剣聖>が破れてしまったからだ。
最後に相手の目前で両手を叩く動きをするのは、<トゥルーラブ>の記憶での<剣聖>の練習の記憶で見たのだが、実戦でそれを使う前に亡くなられてしまったのだ。
「ふふふふふふふ、ふざけんなっ! こんなものぉぉぉぉ! 」
<剣鬼>が叫びながら斬りつけれない。
俺的には、それで逆に動揺して剣が違う方にずれて<トウルーラブ>に制圧されるとか思ってたが、どうやら俺の一流の下程度の技量では分からないのだが、踊りからの危険な匂いがしているらしい。
一応、<剣聖>が練っていた時は一撃必殺の技をめざしていたらしいから、そりゃ、そう言うのがあるのかもしんない。
俺には分からないけど。
<剣鬼>が凄い斬りつけるのを躊躇している。
「どんな技なんだ? 」
「分からない。ただ、<剣聖>の元で学んできた全てを出した踊りらしい。と言うか晩年に新技を作ると言って練りに練って練習していたものを<トゥルーラブ>が真似たらしいけど」
「ヨクワケガワカラナンナ」
リリーも俺と同じらしい。
孔雀の求愛みたいな変な踊りを踊っているだけにしか見えない。
合間合間に「はっ! 」とか「やっ! 」とか掛け声が入るのがきしょい。
だが、どうやら、<疾風>さんは何か感じるものがあるらしい。
どうも、「はっ! 」とか「やっ! 」とか言う掛け声が剣を斬りつけるような殺気が迸っているらしくて、それが出るたびに<疾風>さんと<剣鬼>がびくっとする。
とりあえず、俺は<剣鬼>の剣が歪むことを期待して、それと同時に<トウルーラブ>がガキの頃から徹底的に教え込まれた技がそれに対して反応して抑え込むのを期待していた。
あそこまで身体に刷り込まれた技と言うのは、自分が考えなくても出てしまうものなのだ。
ちょうど、柔道とかでたいした実力は無くても10年くらいやりこむと、事故にあった時に自然と受け身が出来てしまうのと同じである。
特に身体に刷り込まれまくった技と言うのは自然に出てしまうだろうから、それを期待していたのに、ちょっと方向が違っているが、まあ良しとしよう。




