隠蔽と書いて愛情と読めるか?
「わ、私?何で?」
いきなり名が挙がったことに、ただ驚くだけの悠姫。
「何でって…やだ、ゆっきー覚えてないの?まさかまだ戻ってない?」
いかにもありえないと言うように水樹が言った。悠姫にはついていけない話ばかりなのに、更に分からなくなる。
「ねぇ、『魔王』の猫ちゃん。何で思い出させてあげなかったの?」
「…理由など無い。ただ面倒くさかっただけだ」
水樹の問いに、不機嫌そうに答えるヴォルフラム。一方で、全く話が分からない悠姫は、自分なりに考えてみた。
――――――――もしかして、私が魔族だってこと…なの?
ヴォルフラムに言われたことだが、半信半疑のこと。いや、全く信じていなかったこと。
しかしヴォルフラムの言うことは間違っていない。彼の言うとおり水樹は魔族だった。彼の言うとおり悠姫が魔族でもおかしくは無い。むしろ今この場で、彼らが話しているのはそんな内容ではないだろうか。
「ねぇ、ゆっきー。思い出したいでしょ?知りたいでしょ?」
いきなり話しかけてきた水樹。その様子はどこか皮肉気な、しかし最初の余裕などは感じさせないものだった。
「え?あの、その…」
困惑する悠姫。尋ねられたところで、悠姫が決められるようなことではない。知りたいと思う知的好奇心と、知るのが怖いという恐怖心が、確かに悠姫の中には存在している。だから悠姫に決めることはできない。
「いいよ。思い出させてあげる」
悠姫の様子をどうとったのか、水樹が半ば押し付けで言った。そして彼女は杖のようなものを取り出した。どこからと言えば、何もない空間からと言うべきか、知らぬ間に彼女の手に握られていた。
そしてそれを悠姫の方に向け、呪文のような言葉を言い始めた。
「Noble spirits of the dead.Hear my voice.I exist in the all things in nature. Remove her haze―――――――」
水樹が口にする言葉は、英語だろうか。悠姫にも聞いたことのあるイントネーションだった。
「I contract...the power.. liberate it!」
水樹が言い終えると共に、まぶしい光が部屋いっぱいに広がった。
「ん―――――――――」
「………」
「……………」
その部屋にいた二人と一匹は眩い光に包まれた。




