親友と書いて味方と読めるか?
学校から帰ってきてすぐ、悠姫がヴォルフラムに聞いた。
「ねぇ、ヴォルフラム。何で結界効かなかったの?…あれ?でも声は聞こえなかったのか…?ん?どういう事?」
「あいつは多分、人間ではない。だから吾輩の姿が見えたのだ。声が聞こえなかったのはおそらく…」
ヴォルフラムが言いよどむ。
「ん?」
「…おそらく、あいつが嘘をついているからだ。声は聞こえていたはずだが、それを隠した」
「んー、ヴォルフラムの言いたいことは分かったけど、水樹が人間じゃないなんてあるわけないって」
悠姫は軽く笑い飛ばす。そんなこと、あるはずが無いと。
「だが、あれから他の〝クラス〟?とやらに行ってみたが、誰も吾輩には気付かなかったぞ」
否定をしようとするが言葉が出てこない。悠姫をまっすぐに見据える緑の混じった琥珀色の瞳には、嘘も冗談も言っている様子はない。
悠姫には分かっている。ヴォルフラムは、見た目は猫でも、魔王なのだ。麻野川悠姫を魔族だと言い放った、その同じ舌が水樹を人間でないと言ったのだ。きっと悠姫が知らないものを知っていて、経験していて、そこから分かるものがあるのだ。そして、悠姫がいくら否定しようと、所詮小娘の戯言、無意味な言葉にしかならないのだ。
「水樹は、人間ではないとしたら、何?あなたの敵?味方?」
「そんなこと、吾輩は知らない。あいつがどう考えているかなど、知る由もない」
「………」
窓から見える月はきれいなまん丸だった。きれいな月は月光を放ち、それは部屋の窓から差し込むが部屋の電気に打ち消される。だから、窓に背を向けている悠姫は、窓に人影があることに気付かなかった。
「こんばんわ、ゆっきー」
その明るい声は、今まで何度となく聞いてきたものだった。悠姫は驚きで声を出せない。ヴォルフラムはただ睨んでいるだけだった。
「ありゃ、驚きで声も出ない感じ?いーよ、さすがのゆっきーもこんなこと信じられないもんね?普通だよ、その反応。あ、ちなみに、敵か味方かで言ったら、味方の方だと思うよ?ゆっきーがどうとるかにもよるけどね」
クスクスと悪戯っぽい笑みを見せる。それは学校でも聞いたことがある、とても可愛い声だ。
「え、な、み、水樹?何してんのそんなとこで?ッていうかどうやってそこまで…」
「どうやってって、瞬間移動?みたいな?何してるって、ゆっきーとお話しに来たんだよ」
普通に言ってのける水樹。しかし悠姫には良く理解ができない。
――――――――水樹って、何者?魔族なの?
「そ、魔族だよ?でも、魔王の味方じゃない。ゆっきーの味方」
悠姫が驚きで何もできないでいると、横からヴォルフラムが口を挟む。
「お前、何のつもりだ?魔王の前で、魔王の味方ではないと言うのは?」
「そのまんまだけど?私たちは『勇者』の味方であって、『魔王』の味方じゃないもん」
「…反乱者か。何故こちらにいる?」
「分かってるでしょ?ゆっきーがいるから」
「へ?私?」
突然自分の名が会話に入ったことに、ただただ驚くことしかできなかった。




