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勇者と書いて悪者と読め!!  作者: ALFA
第一章
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7/13

愛称と書いて証拠と読めるか?


 悠姫とヴォルフラムは目が点だった。




「ん?どうかした?」


 驚いている悠姫の様子を見た水樹が言った。


 ――――――――なんで見えるの!?





 驚きながらも表面を取り繕う。


「う、うん。なんかついて来ちゃって…」


 そう言いながらニコッと笑う。そんな悠姫の様子に水樹も安心したように「そうなんだぁ」と言って笑う。怪しまれただろうが、どうすることもできない。



「…この者、何者だ?魔族か?」



 ヴォルフラムが放った言葉は、しかし水樹に届くことはなかった。そのまま悠姫に話しかけてきた。


「ねぇ、名前なんていうの?」

「え、あぁ、ヴォルフ。ヴォルフラムっていうの」








 それまで呼んだことのない『ヴォルフ』という愛称が口から出た。その驚きは、水樹には伝わらなかったらしい。「へぇー」とヴォルフラムを可愛がっている。


 ――――――――ヴォルフ?ヴォルフって…





「何故吾輩をヴォルフと呼んだ?お前は、〝アサノガワユウキ〟はそう呼んだことはないだろう?」



 悠姫の心を見透かしたかのようにヴォルフラムが言った。その言葉も、すぐ近くにいる水樹には聞こえなかったらしい。結界が効いているという事だろうか。



「ねぇ、良いの?学校に猫なんか連れてきて」

「…まぁ、あと二時限だけだし、何とかなると思う」

「ふーん」


 ちょうど学校のチャイムが鳴った。水樹が「早く行こう?」と言ったのでとりあえずヴォルフラムは置いていった。


 ――――――――他の人に見られちゃまずいし、ね。何とかするでしょ、自分で。












 悠姫が午後の授業を終えるまで、ヴォルフラムは姿を現さなかった。

 その授業の間、悠姫はずっと考えていた。




 ――――――――何でヴォルフって…聞いたこともなかったのに…












 その後悠姫がヴォルフラムと会ったのは、校門を出たところだった。


「どこ行ってたの?」

「ん、ちょっとな」

「ふーん」



 よく分からないが、たぶん大丈夫だろう。仮にも魔王なのだから、自分のことくらい自分でできるだろう。それに、悠姫はそんなこと考える余裕なんてなかった。ヴォルフラムをヴォルフと呼んでから、考えるたびに頭の中に靄がかかる。そしてそこで行き詰る。その繰り返しだった。



















 並んで家路につく黒猫と少女。それを校舎の屋上から見ているものがいた。


「あーあ、もう会っちゃったんだぁ。もうちょっと、幸せに暮らしていれば良かったのにぃ」


 風に吹かれながら屋上の手すりに寄りかかっている少女。蜂蜜色に光る黄金の長い髪は風に揺れ、海よりも深い蒼い瞳は獲物を捕らえたように鋭く光っている。そして少女が身に纏うものは、星嵐学園の制服だった。彼女は一度、クスリ、と笑った。


「ゆっきー、もっと警戒してなくちゃ。いや、猫ちゃんが警戒してなくちゃ、かな?」





 彼女の言葉は、しかし誰にも伝わることはなかった。











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