友達と書いて魔族と読めるか?
「おい、〝アサノガワユウキ〟お前どこか行くのか?」
悠姫が制服を用意していると、ヴォルフラムが話しかけてきた。
「学校に行くの。学生だからね」
素直に答えた悠姫だが、ヴォルフラムには分からなかったらしく首をかしげている。
「〝ガッコウ〟?〝ガクセイ〟?」
「知らない?みんなで集まって勉強するところ」
「勉強は城でするものだ」
「………」
さて、と悠姫は制服に着替えようとして気がついた。
「ヴォルフラム、着替えるから部屋から出てって?」
「何故だ?」という声も聞こえぬふりで、強制的に部屋から追い出した。
――――――――猫だと思っても恥ずかしいっての…
制服に着替え終わりカバンを持ってリビングに行くと、既にくつろいでいる猫が二匹。窓から差し込む太陽の光の中で、仲良く並んで日向ぼっこをしている。
「ウフフ、可愛いでしょう?さっきからずっとそこにいるのよ」
嬉しそうに母は言った。
―――――――――猫は猫どうしってこと?魔王だなんて分からないな…
朝食も食べ終えて学校に行こうとしたら、ヴォルフラムがムクッと起き上がり玄関までついて来た。
「〝ガッコウ〟とやらに行くのか?吾輩もついて行くぞ」
「ダメ。学校は基本的に動物は連れて行っちゃダメなの。だからお留守番」
それでもヴォルフラムは諦めず、ついてきてしまった。
「ダメだって言ったのに…」
「ばれなければ良いのだろう?」
「そういう問題じゃ…」
学校に着いても、ヴォルフラムは誰にもばれなかった。彼いわく結界を張っているとか何とか。悠姫に見えることはどうでも良いし、誰にも迷惑をかけなければそれで良い。
「おはよー、ゆっきー」
「おはよ、水樹」
学校での一番の友達がこの水樹だが、最初は彼女だけだった「ゆっきー」という呼び名も今では定着してしまっている。
「おっはよー、ゆっきー」
「ゆっきー、おはよ」
「おはよう。ゆっきー」
小、中学校と友達のいなかった悠姫には慣れないものだった。ゆっきーと言われるたびに苦笑いが絶えない。しかし、それでも嫌な気がしないのは温かい気持ちが伝わってくるからだろうか。以前はずっと悪意をこめられた呼び方しかされなかったから、少し恥ずかしい面もある。
お昼休みは屋上で水樹と過ごす。いつも他愛無い話をしながら、時には水樹の書いた小説を読んだりして、とても充実した、幸せな時間を過ごしている。今日もまた、屋上で過ごしている。そのとき不意に彼女が悠姫の横を見た。悠姫の横にいるものを見た。
「ねぇ、その猫ちゃん、ゆっきーのとこの猫ちゃん?」
見えるはずのないものを見た水樹に、悠姫もヴォルフラムも驚きを隠せなかった。




