歪曲と書いて信愛と読めるか?
意味ありげな微笑を浮かべたまま、ユーキアータは話続けた。
「私が彼を変えることが出来なかったから。だから戻ってきたの」
「どういうことだ?」
ヴォルフラムが問う。警戒は見えないが、言葉にはどこか鋭さが感じられた。
「貴方と一緒なら、きっと彼を変えられる。魔界も元に戻るはずよ?」
ユーキアータがそう言うと、怒りに震えたメルセデスが怒鳴る。
「貴女は彼を、勇者を裏切った!!」
そう言いながら、彼女はユーキアータに斬りつけてきた。彼女が持っている杖だったものは、いつの間にか剣になっていた。しかしその剣は、ユーキアータの身体に届く前にボロボロに崩れた。驚愕に満ちた、それでも鋭くユーキアータを睨みつける瞳。
「貴女のその力は、彼(勇者)の下にあるべきなのに!!」
メルセデスは泣き崩れる。開いている窓から吹く風が、彼女の髪を揺らして彼女の顔を隠す。ユーキアータもヴォルフラムも何も言わず、ただメルセデスの泣き声が虚しく響いた。
しばらく静寂に包まれた後、ユーキアータはいきなりメルセデスに近づいていった。
「メルセデス。貴女の気持ちは分かるけど、今は少し眠っていて?」
ユーキアータがそう言って、メルセデスの瞳を覆うようにして手をかざした。すると途端にメルセデスは、座る力も失いその場に倒れた。今まで黙っていたヴォルフラムが口を開く。
「何故殺さない?お前に刃を向けたのだぞ?」
「そんなこと、すると思われてたの?心外だわ」
メルセデスを自宅に運んだ。その間、ユーキアータもヴォルフラムも口を開かない。その夜の間、長く続く重い沈黙が、結局消えることは無かった。
翌朝目が覚めたときは、ヴォルフラムの姿は無かった。
「二人ともどこ行っちゃったのかしら…」
ヴォルフラムと猫のユーキアータの姿が見えなかったので、母は心配そうにしていたが悠姫は何も言わなかった。「ユーキアータが戻ってくることは無いよ」そう心の中で呟いた。だってあの猫は、悠姫の魔力の塊だったのだから。
学校に登校すると、いつもと変わらないメンバ―が慣れないあだ名で呼ぶ。
「おはよう、ゆっきー」
彼女も例外ではなく、いつもと変わらない様子で話しかけてきた。
「おはよ、水樹」
こうしていつもの日常が始まる。
『ユーキアータ』
『ボクは君を失いたくない』
『だから全部壊してあげる』
『何が気に入らないんだい、ユーキアータ?』
『ボクの全部を君にあげるよ?』
『ボクはこんなに君を愛しているのに?』
『君がずっと欲しかったんだ』
『何故ボクから離れていくんだ?』
『ボクの下に鎖でつないであげる』
『ユーキアータ』
『だから戻っておいで』




