↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫁ぐなら『西の変態』と『東の変態』のどちらがいいかと問われました  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/8

第五話 杞憂

結婚式で裸族の殿方と初対面。

……ショックを受けるかもしれない。

いいえ、花嫁であるわたくしが死んではならぬ。


西の変態、裸族信仰者に出会っても、意識を失わない程度の覚悟が必要。

……覚悟だけでは足りない。

そう! 大事なのは事前の情報!


敵を知り、己を知れば、百戦危うからず……と、どこかの国の言葉にもあったもの!

対策が必要よ、対策が!


「ジュリアン様。西の御方について、またかの国について、わたくしに詳しくご教授くださいませ!」


悲壮な覚悟で問えば、ジュリアン様は快く答えてくれた。


「東の我が国は、ローズマリーの国と何ら変わらないごく普通の国でな。まあ、その中で女装が趣味の私だけが異端……であるのだが」


異端という言葉の中に、ジュリアン様の「自分だけが他者と異なる」と言った苦い思いが含まれているようで。


「異端ではなく個性でございましょう?」


思わず口調が強くなってしまった。


確かに初対面のときは、わたくしもジュリアン様には圧倒された。

巨体であるのに麗しいお顔。動作も優雅。

だけど、不快感はなかった。


ジュリアン様はジュリアン様という唯一無二のお方。

その上、ドレスや靴の趣味も合う。

とても素敵な方だ。


わたくしが強く主張すれば、ジュリアン様は嬉し気に微笑んでくださるが……。ご自身でもこれまでいろいろな葛藤を……乗り越えてきたのかもしれない。

だからこそ、『西の変態』『東の変態』と並び称された二者が……友誼を交わしたのかもしれない。


わたくしがジュリアン様と出会う前の時間。

共に過ごされた時間。


それを、結婚するからといって、わたくしが否定してはならない。


「ありがとう、ローズマリー」


わたくしを見つめるジュリアン様の瞳は……とても優しい。


「まあ、その……。私と違い『西の』は、国を挙げてというか、国民全体が普通に裸の民で」

「普通……」


普通って何……と、思わずツッコミを入れたくなりますが。

話が逸れるので、心の中だけで留めておきましょう……。


「そもそも……というか、以前は西には服という概念自体がなかったのだ」

「は、い……?」


服を着ないのではなく、服という概念がない……?


「西は……、周囲を森に囲まれた独立した国……というよりも、そこに住まう民で。自然信仰というか、自然と一体化することが善であるという思想を持った一族であった……」


自然と一体化……?


「ああ。人は母体から生まれて、死すときに自然に帰る。故に、何も持つものはなく、身一つで……、ただ、死後の世界に持っていけるのは己の魂のみ。その魂を磨くことこそが人生である……と」

「まあ……」


なんというか……、信仰? 宗教? いえ、思想なのかしら……。


「生まれ、育ち、肉欲も持つ時期もあるが……、己のすべてを浄化し、天に至る……。それが『西』の思想であり、『西』の民全員が共通して有する認識……ということになる……」


裸族という言葉を聞いた時は、服も着ないなんて、野蛮で破廉恥な……と思ったけれど。


違うのね……。


「西の国の者が唯一持つのが楽器だな。打楽器、弦楽器……人によりさまざまではあるが。曲を奏で、魂を昇華する修行となす……。まあ、現在は偉大なる我らが宗主の元、従属したので、それなりに他国……我らが国の知識はあるのだが」

「知識を得ても、他者は他者、我らは我ら……というところでしょうか」

「まあ、そんなところかな?」

「いろいろな国、様々な考えがあるということですわね……」


そう言えば、別の大陸には人と動物が融合したような獣人という種族もいると聞いたことがあるわ。その国でもまた常識が異なるかもしれない。

わたくしの常識が、世界の常識ではない……のかもしれない。

裸族も、裸族の国では裸であることが当たり前。

多様性を受け入れられるだけの広い心を持たねばならないわね……。


「ああ。私は……西のそんな理念に賛同はしているが。やはり女性が、その……男性の裸体を直視しずらいというのも、まあ、感情として分かるというか……」


文化の差……は、認めたい気持ちもある。

しかし、わたくしの結婚式で、堂々たる肉体美を……何も隠すことなく晒されるのも……、問題……。


しかし、ただ裸体を晒したいという露出趣味ではなく、国、国民、更にはその国の思想……。

裸体は文化……ということであれば……。


「分かりましたわ、ジュリアン様。わたくしが西の御方と対面するときは、首から上だけに視線を向けましょう! 決して首より下は見ない……と!」


覚悟を決めたわたくし。

招待客にも徹底周知すれば、なんとかイケるのでは……。


しかし、わたくしの決意は……ある意味杞憂に終わったのだ。



と言っても、国上げての信念を曲げて、服を着用して結婚式に臨んでくださったのではない。腰布を巻いてくださったのでもない。


『西の変態』と名高いフレミング王国国王であるダムソン・デ・フレミング陛下は、一糸まとわぬ姿で堂々と、わたくしとジュリアン様の結婚式にご参列されたのだ……。







お待たせしました! 

次回、西の御方、登場です!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この世界には獣人とかいるのかな? ケットシーとかクーシーとか? 全身獣毛ならば服は不要かも? もっとも獣人ならば、そちらの方が裸族よりも噂になっているでしょうが…
体を隠すぐらいの大きな楽器を纏っているとかか?
西の裸族たる国王陛下は結婚式に一糸まとわぬ姿で堂々と参列! ということは、もしかしたら髪や髭を長く伸ばして裸体はチラ見程度に隠されている?これは思い付かなかった…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。