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春雷  作者: あんず小町
8/9

第1章 春 第8節 涼風

第8節 涼風です。

花火が見たくなってきました。

ぜひご一読ください!

涼風が吹き抜ける今宵、夏祭りが開催される。

「なぁ、夏祭り一緒に行こうぜ!」

島で唯一のイベントである夏祭り、屋台もたくさん出る。

「いいね。一緒に行こう。」

「毎年恒例だな。」

俺となおが夏祭りに一緒に行くのは数年目だ。

「じゃあ、17時にいつもの場所へ集合な!また夜に会おうぜ!」

「そうだね。ばいばい。」


「やったー!今年もなおと行けるのか。楽しみだな。あ、今年は射的をしようかな。去年は食い物買いすぎて金が無くなったからな。」

俺は目を細める。

「母さん、ただいま!」

「かず、おかえりー!」

「今日、なおと夏祭り行ってくる!」

「暗いから気をつけるのよ。街灯も全然ないから。」

「はーい!」

母に許可を得た。

だから、なおと楽しめる。

「甚平着ていこう!何色にしようかな。」

何色にしようか悩んでいると、ふと思い出した。

『 かずは、幽艶な黒髪が綺麗だよね。紺青とか似合うねぇ。海の持ち主みたいだなぁ。』

『 なおは、髪の色素が薄くて、艶めく栗色がかっこいいよな。だから、蜜柑色とか似合うよな。みかんに愛されているみたいだ。』

そんな会話を想起した。

だから、俺は紺青色の着物を選んだ。

悩んでいると時計の針が時間を刻み続けていたことに気づく。

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気をつけてねー。」


「かずくん、こんばんわ。」

「瀬乃さん、こんばんわ!」

島生活というのは、人との距離を縮めやすいらしい。

島民、全員の名前が当たり前に分かる。

「堺さん、こんばんわ!」

「かずくん、こんばんわ。今年もなおくんと屋台巡りをするのかい?」

「はい!」

「そうなんやね。僕も夏祭り行くんだ。それじゃあ、楽しもうね。」

「楽しみましょう!」

その後も夏祭り会場に向かっていると、島民同士で挨拶をする。

1年で1番、一致団結する時だと思う。


「なお!待った?」

「全然、今来たところだよ。それにまだ集合時間の10分前だから、大丈夫。」

「ー綺麗。」

夕焼けのような蜜柑色の甚平、毛先を遊ばせた艶めく栗色の髪。

なおの姿を見て思わず言葉を紡ぐ。

「なおって、幽玄な気配を纏ってるよな。綺麗。」

「ありがとぉ。かずの幽艶な黒髪、海のように深く暖かい紺青色。似合ってるよ。」

「そんなストレートに褒められると照れちゃうよ。」

「かずが、僕のことを先に褒めたんだもん。おあいこでしょ?」

「確かに。」

俺は八重歯をのぞかせて笑う。

「さぁ、屋台巡りをしようよ。長い宵になるねぇ。」

「れっつー?」

「ごー!」

二人で鮮やかな星が浮かぶ夜空に向かい声を上げた。


「うぉー!あのくじ引き見ろよ!ヒーローのフィギュアがあるぞ!」

「欲しいの?」

「欲しい!だって、大人気のヒーローなんだぜ。持ってたらヒーローになれる。」

「ーくじ引きしてみる?」

「おう!」

島内でヒーローにもなれる、なんて最高の響きなんだろう。

「堺さん、くじ引きしたいです!1回で!これ100円!」

「僕も1回引かせてください。」

「はーい。ーかずくん、さっきぶりだね。」

「そうですね!」

堺さんは近所のおばさんたちに『 いい男。』といつも褒められている。

「はい、この箱から紙を1枚選んでね。」

「絶対当てる!ヒーローが欲しい。ヒーローが欲しい。ヒーローが欲しい!」

1枚の紙を選んだ。

「残念、D賞だね。鉛筆2本選んで。」

「ちぇー。」

少し口を尖らせながら鉛筆を見定める。

「ー紺青色と蜜柑色だ。堺さん、これください!」

「はいよ。」

「なお、紺青色の鉛筆あげる。俺のは蜜柑色だ!」

「僕が蜜柑色の鉛筆じゃなくて?」

「そうだ。お互いの着物の色だろ。だから、辛いことがあったらこの鉛筆を走らせたらいい。そうしたら、俺のことを思い出して元気が出るだろ?」

「なるほど。ありがとぉ、かず。」

「いいぜ!」

「僕も引こう。」

なおが1枚の紙を選んだ。

「お、B賞だ。おめでとう。ボールの中から好きなのとっていいよ。」

なおは迷わず選んだ。

「このサッカーボールください。」

「はいよ。」

なおって本当にサッカーが大好きなんだな。

「はい、かず。」

だから、俺は戸惑った。

「え?」

「さっき、なおが僕に鉛筆をくれたでしょ?だからお返しだよ。」

「いい、のか?」

「ん?返報性の原理を利用したかったんじゃないの?」

「それなんだ?」

「分からないのか。」

なおは、一言ぼそっと呟いた。

「とりあえず、あげるね。」

「なお、ありがとう!将来プロサッカー選手になった時、一緒にこれ使おうな!」

「そうだね。僕もなりたい、プロに。」

「なりたい、じゃなくてなるんだ。俺たちなら絶対なれる!」

「絶対ではないよ。」

その言葉を聞いて、そういうことじゃないんだよなと思った。

だから、言い返そうとした。

すると、堺さんに声をかけられた。

「ねぇ、これあげるよ。かき氷無料券。二人で楽しんでおいで。」

俺は目を輝かせて言った。

「嬉しいです!堺さん、ありがとうございます!」

「いいよ、いいよ。」

堺さんの人の良さそうな笑顔が一番星のように明るく見えた。

「なお、行こうぜ!」

「うん。堺さんありがとうございます。」

「いいよ。」


「かき氷、美味そう!」

「そうだね。何味にする?」

「んー、あ!みかん味あるじゃん!」

「そうだよ。僕のおばあちゃんが育てたみかんを使ったシロップだよ。」

「そうなん!?それじゃ、みかん味のかき氷を2つ頼もうぜ。」

「うん。そうしよ。」

「すみません、みかん味のー」

顔を上げると先生が店番をしていた。

「あれ、先生?」

「そうですよ。こんばんわ。」

「こんばんわ。」

「先生、みかん味のかき氷2個ちょうだい!」

「かしこまり!はい、シロップ好きなだけかけていいけんね。」

「ありがと!」

「遠慮せずにかけてね。」

「よっしゃ!たっぷりかけよ!」

「かずさんじゃなくて、なおさんに言ったんよ。いつも遠慮しよるけん。」

「お気になさらず。」

なおは先生との出会いに、さして驚いたような表情を見せなかった。

それどころか、堂々と淡々と言葉を返している。


「いっただきまーす!」

「いただきます。」

手を合わせて唱える。

「美味い!」

「でしょう?僕のおばあちゃんが作ったみかんだもん。」

なおは、笑みを魅せた。

「ごちそうさまでした。」

「かずは、食べるの早いよねぇ。」

「なおは、遅いよな。よく噛んで食べてんだな。偉いな。」

「そう?あ、食べ終わったよ。ごちそうさまでした。」


太陽はまだまだ寝ている。


「花火見に行こうぜ!」

「もうそんな時間かぁ。行こう。」

俺たちは小走りで向かう。

「今年もあそこで見るの?」

「モチのロン!」

「あそこ、人が少なくていいよね。」

「俺が見つけた秘密の場所だからな!」

秘密の場所だけど、なおには教えた。

なんせ、相棒だから。

「着いたー!」

なおの方を見るが、息が上がってない。

普段から走り込みをしてるからだろうな。

俺もだけど。

「もう花火始まってる!」

夜空に色とりどりの花が浮かぶ。

1輪、また1輪と咲いては散る。

「なお、花火って儚いよな。」

「なんでそう思ったの?」

「だってさ、あんなに強い光を放ってるのに、消える時は一瞬だろ?色鮮やかで綺麗なのにな。だからだよ。」

「色は金属元素で決まってるんだよ。」

「なおってさ、いつも正論を振りかざしてるよな。あ、ごめー」

「謝らなくていいよ。僕は正しいことは正確に伝えるべきだと思うから。」

2人の間を気まずい沈黙が包み込む。

「なぁ、花火綺麗だな。」

「うん。綺麗だね。」

俺となおは同じものを見ている。だけど、感じていることは違う。

きっとそうなんだ。

「なお、俺の相棒になってくれてありがとう。これからもよろしくな。」

「こちらこそだよ。ありがとう。」

清涼な風が吹き抜ける。

輝く星々、圧倒的な色彩と鮮やかさを放つ花火に照らされる。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

次回もお楽しみに!

感想待ってます!もし宜しければお願いします。

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