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春雷  作者: あんず小町
7/8

第1章 春 第7節 みかん

第7節 みかん です。

ぜひご一読ください!

「やっほー!なお!」

「おはよう。かず。」

今日はなおの家に遊びに来た。

みかんの甘酸っぱい香りが立ち込めている。

「まずは、本日の講師を紹介いたします。僕のおばあちゃんです。」

「初めまして、かずくん。今日は手伝ってくれるんよねぇ。ありがとう。1人じゃ大変じゃけん。助かるわぁ。」

そう言って姿を見せたおばあちゃんは、白髪で髪を短く切っていた。

「初めまして!俺がみかんの収穫をしたかったんで、大丈夫です!」

俺は太陽にもみかんにも負けない笑顔を見せた。

「ねぇねぇ、かず。みかんについて調べてきた?」

「勿論!約束したからな。」

「本当!?嬉しいよ!」

なおの、トランポリン並の声の弾みに少し目を見開いた。

「じゃあ、早速クイズしてもいい?」

「おうよ!どんな問題でも来い!」

俺は胸を張って答えた。

「じゃあ、一問目。徐々にレベルを高めるよ。」

「分かった!」

「みかん収穫量ランキング一位は何県でしょうか。」

みかんの収穫量については調べた。

愛媛が一位だと思っていたけど、確かー。

「和歌山県!どうだ?正解だろ!」

威勢よく答えたが、沈黙の重苦しい雰囲気がまとわりつく。

少し時間が経つと、なおは言った。

「ー正解。すごいよ!かず!」

素直に褒められ、むず痒い気持ちになる。それも束の間。

「じゃあ、2問目!レベルを一気にあげるよ!」

「えー。ちょっと待ー」

「ここは段々畑です。何度以上の階段状に作られた畑のことでしょうか?」

「はぁー!?」

俺は思わず、大きな声を出した。

だって、そんな問題はみかんに関係ないじゃないか。

だが、なおと約束したから、なおに信頼を寄せられているから。

その信頼に応えなければならない。

「ーじゅ、十五度!」

「大正解!!」

間髪入れずに正否を伝えられた。

少しドキドキを味わいたかったのに。

でもー

「良かった。正解か。」

「うん!かずさすがだね!」

「えへへ、モチのロンだ!」

「愛媛県には『 愛媛・南予の柑橘農業システム』として日本農業遺産の認定を受けている段々畑もあるんだ。しかも、段々畑って言い方だけじゃないんよ。棚田とも言われるんだ。とっても興味深いよね!しかもー」

なおの突然のマシンガントークに驚いた。

だが、驚いている暇はない。

この勢いの状態はきっと、夜まで続いてしまう。

だから、俺は声をかけた。

「なおのばあちゃんを待たしてるし、早く始めようぜ。」

「本当だ!ごめんね。おばあちゃん。」

「全然いいよぉ。友達を大切にする所がなおくんの良いところの一つなんだからねぇ。」

「ありがとう!おばあちゃん!」


「さて、みかんの収穫方法を伝授しようかねぇ。」

「なお、伝授ってなんなん?」

「ー伝授は教え伝えることだよ。」

「ふーん、なるほどな!」

俺が疑問を投げかけた時、なおは悲しげに瞳を揺らしていた、気がした。

だが、気のせいだろう。

「教えてください!」

「感情豊かだねぇ。なおも見習ってみたら?」

「ー感情なんて無駄だよ。時に合理的な判断が出来なくなる。必要ないよ。」

「え?」

まるで稲妻が走ったかのような衝撃だった。

今まで、俺の事を無駄な事ばかりしている人間だと思ってたのかと。

俺が顔を曇らせ始めると、なおが言った。

「かずが気にする必要は無いよ。かずのそこが面白いんだから。」

「そうか?」

「そうだよ!だから一緒にいたら楽しいんだ。」

「おう。サンキュ。」

そんな会話をしていて、想起した。

俺たちは今、教えを乞うていたのだと。

うっかり忘れて盛り上がってしまった。

「話もまとまったかい?それじゃあ、教えるよ。」

「はい!!」

「うん。」

「最初のカットをする時には果実から少し離れたところを切る。二度切りをすることが大切だよぉ。」

なんだそんな事かと思った。

調べたら覚えてきた内容だ。

だから、サクッと終わらせてしまおう。

「早速実践に移ってみようかぁ。」

「やったー!」

「うん。」


「ここをこうして、切る。」

中々早いスピードで切れた。

だから、自慢をしようと思ってなおの方を見た。

なおの様子は不思議だった。

「果実の大きさはー。枝の角度はー。房の数はー。」

「なお、そこまで気にしなくていいんじゃね?」

そう言うとなおは眉をひそめて答えた。

「一番綺麗に収穫したいんだ。

美しい収穫をしたいから。」

俺はなおの考えが理解できなかった。

なおは俺とは比較にならないほど賢い。

だから、そんなものかと、考えていたことを飲み込んだ。

「そっか。」

すると大きな声が聞こえてきた。

「収穫したみかんを持っておいでぇ。パフェを作ろうかねぇ。」

「よっしゃ!俺の大好物だ!」

「かず、甘いもの好きだよね。ドーパミンが出るからかな。」

「?。よく分からないけど、行こうぜ!」

「うん。」


「完成したよぉ。食べてごらんなさい。」

「いっただっきまーす!」

「いただきます。」

太陽のように光り輝くみかんを見つめた。

「うまそー!」

「かずが食べないなら、僕が食べるよぉ?」

「タンマ!タンマ!食べるけん。」

光沢のあるスプーンに光り輝くみかんを乗せて、口へ運搬する。

「うま!」

「でしょ?」

「おう!」

「おばあちゃん、うまいです!」

「そうかい、そうかい。」

そう言ったおばあちゃんは、なおとは雰囲気が違う笑顔を浮かべていた。


「今日はありがとうございました!楽しかったし、うまかったです!」

「よかった。なおは変わり者だけどいい子だから、こんなに優しい友達がいるなんて嬉しいよ。ありがとうねぇ。」

「そうですか?よく分かんないけど、なおとはこれからもずっと友達です!」

「かず。改めて、これからもよろしくね。」

「よろしく!」

俺たちの笑顔はきっと、瀬戸内の宝石のような美しさよりも、みかんのような光よりも、煌めきをはらんでいた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!!

次回もお楽しみに!

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