テスト結果
テストが終わった数日。
教室の雰囲気はテスト期間中の緊迫感から一変し、夏休み直前のソワソワとした浮ついた空気に包まれていた。
ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り、担任が束になったテスト用紙を抱えて教室に入ってくる。
「よーし、静かにしろー。それじゃあ期末テストの返却と、今回の順位を発表するぞ」
クラス全体に再び固唾をのむような緊張が走る。
担任は手元の書類に目を落とすと、パンと叩いて晴れやかに声を張り上げた。
「まずは今回の学年最高点……そして、1年学年総合1位の発表だ。……柏村彩花!」
その瞬間、バン!と隣の席で彩花が勢いよく立ち上がった。
「っ……はい!」
「おめでとう柏村。完璧な成績だったぞ。……よし、じゃあ順にテスト返していくから取りに来いー」
「「「おおおおお!!!」」」
クラス中から一斉に大きな拍手と歓声が巻き起こる。
彩花は担任からテスト用紙を受け取ると、少し誇らしげに、そして今にも跳び上がりそうな足取りで席に戻ってきた。
「見た、悠くん……!? 私、本当に取ったよ……っ!」
戻ってきた彩花が差し出してきた成績表には、くっきりと『学年順位:1位』の文字が刻まれていた。
「すごいな彩花。本当に1位取るなんて、マジで有言実行じゃないか」
「ふふん、言ったでしょ? 私、悠くんとの約束がかかってたら本気出すんだから!」
彩花は頬をほんのり桜色に染めながら、クラスメイトに聞こえないようにスッと顔を近づけて声を潜めた。
「『夏休み、二人でどこか遊びに連れて行ってくれる』って約束……覚えてるよね?」
「ああ、もちろん覚えてるよ。どこに行きたいか決まったら教えてくれ」
「本当!? やったぁ……!」
嬉しさを隠しきれない様子で胸の前で手をキュッと握りしめる彩花。
そんな微笑ましい光景の横で、後ろの席から安堵と歓喜の混ざった悲鳴が上がった。
「悠ぅぅぅぅ!! 見てくれ、俺の赤点回避した勇姿をぉぉぉ!!」
「おお、智也。よかったな」
智也が提出された答案用紙を掲げて涙目になっている。見ると、平均点ギリギリだが確かに赤点は回避していた。
「あー、マジで悠と柏村姉妹のおかげだ! これで補習なしで夏休み突入できるぜ! マジでサンキュー!」
「ふふ、良かったね智也くん。しっかり復習もしておきなよ?」
「へーい! いやー、これで心置きなく夏休みを楽しめるぞ!」
こうして無事にホームルームが終わり、放課後を迎えたのだった。
◇
「——でね! さっき行きたい場所考えたんだけど!」
放課後の帰り道。夕日になびく黒髪を揺らしながら、彩花が弾んだ声で俺の隣を歩く。
「どこに行きたいんだ?」
「あのね……プールに行きたいの!」
「プール?」
「うん! 市民プールとかじゃなくて、最近駅前にできた新しいレジャープール! 流れるプールも大きいウォータースライダーもあるんだって!」
彩花はパァッと表情を輝かせながらこちらを見上げてくる。
「夏だし、二人でパァーッと遊びたいなって思って……どうかな?」
「いいんじゃないか? 彩花が1位を取ったご褒美だし、そこにしよう」
「本当!? やったぁ!」
彩花は飛び上がらんばかりに喜ぶと、不意に俺の服の袖をぎゅっと掴んできた。
「楽しみだなあ……悠くんと二人でプールデート……あ」
自分で『デート』と言ってしまったことに気づいたのか、彩花は急に顔を真っ赤にしてパッと袖を離した。
「あ、ううん! デートっていうか、その……お出かけ! お出かけだからね!?」
「はいはい、分かってるよ」
「うぅ……悠くんのバカ……」
照れくさそうに顔を背ける彩花だったが、その口元には隠しきれない幸せそうな笑みが浮かんでいた。
こうして、期末テストという大きな壁を乗り越えた俺たちは、約束のプールデートという最高の楽しみを胸に、波乱と期待に満ちた夏休みへと足を踏み出すのだった。
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