中間テスト終了
昨日、投稿が出来ず申し訳ございませんでした!!
本日、もう1話投稿いたします!!
桜庭先生から彩花の様子を見てほしいと頼まれてから、3日が経過した。
いよいよ今日から中間テストが始まる。テスト期間は5日間あり、各曜日ごとに2、3科目のテストが行われる。初日の今日は現代文と生物のテストだった。
俺は特別なアクションを起こすことなく、それとなく彩花の様子を観察していたが、今日までのところは何も問題がないように思えた。現時点では、桜庭先生の気にしすぎなだけだと言えるだろう。
「今日から中間テストだね」
「だな」
「悠くんは大丈夫そう?」
「まぁ、赤点を回避できるくらいには勉強してきたよ」
「悠くんって勉強苦手なの?」
「いや、苦手でも得意でもないから普通だな」
「そうなんだ」
「そういう彩花は大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫だよ。……私は、大丈夫……」
最後の一言は、まるで自分自身に言い聞かせているかのような呟きだった。
(……というか、彩花はどうしてここまで中間テストに本気なんだろうか?)
テストを頑張るというのは学生として至極当たり前のことだが、彩花の打ち込み方はどう考えても異常な気がする。良い成績を取りたいのだとしても、ここまで思い詰める必要はあるのかと疑問に思うほどだ。
初日のテストが終わると、彩花は荷物をまとめてすぐに帰宅してしまった。
明日のテストには数学があるため、智也が「一緒に勉強してくれ!」とせがんできた。彩花も一緒にどうかと声をかけたのだが、「用事があるから」と断られてしまったのだ。
「なぁ悠……なんか最近の柏村、様子おかしくね?」
「そうか?」
「うん。いつの間にか毎朝勉強するようになってたし、最近じゃ休み時間もずっと机に向かってただろ?」
「テスト前だからじゃないのか?」
「う~ん……そうなんだろうけどさ。なんか、苦しそうに見えるんだよな」
(……苦しそうに見える、か)
たしかに、あの鬼気迫る表情を見ていると『苦しそう』という表現がしっくりくるかもしれない。
おそらく今の彩花をそんな風に見ることができているのは、クラスの中でも智也くらいだろう。他のクラスメイトからは「すごく勉強を頑張っている優等生」にしか見えないはずだ。実際、「勉強ばっかりで付き合いが悪くなった」と影でコソコソ愚痴を言っていた奴もいたくらいだしな。
智也は『柏村彩花』という1人の人間をちゃんと観察しているからこそ、そういう違和感に気づけるのだろう。柄にもなく、こいつが友達になってくれて良かったと思えた。
「けど智也、お前……人の心配をしてる余裕はあるのか?」
「ない! 助けてくれ!」
「素直なやつだな」
「それが俺の魅力だろ?」
「自分で言うな……」
それから、今回のテスト範囲のほぼ全てを智也に叩き込んだ。
教え終わった頃には、外はすっかり暗くなっていた。智也に教えているうちに俺自身の理解も深まったので、数学のテストは帰ってから何もしなくてもそこそこ良い点が取れそうだ。それくらい、智也に数学を教えるのは骨が折れたのだった……。小テストの日に教えた問題の解き方は覚えていたが、それ以外の応用がまるっきり分かっていなかったのだ。
――それからも、テスト期間の日々はつつがなく過ぎ去っていった。
テストがすべて終わってからは、彩花が朝早くから登校して勉強するようなこともなくなり、テスト前の元通りの日常が戻ってきていた。
桜庭先生の心配も、ただの気にしすぎだったのだと……そう思っていたのだが。
「……悠くん」
そう呟いた直後、彩花は背を向けて疾走していった。
俺が声をかけた瞬間の彩花の顔は――今にも泣き出しそうで、まるで世界に絶望しているかのような表情だった。
……桜庭先生の胸騒ぎは、正しかったらしい。
それも、今の彩花の表情を見る限り――最悪な形で。




