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陰キャな俺の初恋相手の妹が、学年一の美少女になっていた。それでも、俺からしたらそれだけだ。  作者: 白浜 海
入学編

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テスト一週間前

 長いようで短くもあったゴールデンウィークも終わり、今日からはまた通常授業が始まってしまう。


 俺は憂鬱な気分を抱えたまま教室へ入ると、今日も今日とて彩花は朝から机に向かって勉強に勤しんでいた。


「あっ、悠くん。おはよう」


「おはよう」


「お姉ちゃんの件、ありがとね」


「あぁ」


『お姉ちゃんの件』とは、ゴールデンウィーク中に菜奈さんから呼び出された件のことだ。話を聞くと、あれからは菜奈さんとも元通り仲良く話せているそうだ。


ただ、「普段よりも構われすぎてちょっと疲れた」と冗談めかして言っていた。実際に少し疲れるくらい猛烈に菜奈さんに絡まれたであろうことは、容易に想像がつく。


「今日からもう、テスト2週間前だね」


「やめてくれ……ただでさえ、ゴールデンウィークが終わって憂鬱なんだ」


「ふふ。悠くんも、まだそんな顔するんだね」


「?」


「悠くんも変わったなぁって思ってたけど、実はあんまり変わってないのかもね」


「そりゃ、人間そんなに簡単に変わらんだろ」


「そうだね……だから、頑張らないと……」


「頑張る?」


「ううん。なんでもないよ!」


 彩花は、自分を変えたいのだろうか?


現時点でも控えめに言って変わる必要性など全くないように思えるのだが。容姿はもちろんのこと、性格だってすこぶる良い。これ以上何を新しく変えたいと思うのか、向上心が人並み未満の俺には皆目見当もつかない。


 それからの学校生活は、智也からゴールデンウィーク中の土産話を散々聞かされたこと以外、何事もなく終了した。智也は早くもこのクラスでできた友人達と旅行に行っていたそうだ。俺も誘われはしたものの、秒速で丁重にお断りしていた。


 ――ゴールデンウィークが明けて、早くも1週間が経過した。


 今日からはテスト1週間前である。さすがにそろそろ勉強を始めなければいけないと焦り出す時期なのだが、朝から教室でペンを握っているのは相変わらず彩花だけであった。


当初こそ違和感があったものの、今では『毎朝勉強している彩花』がすっかり日常の光景として定着している。


「おはよう、悠くん」


「おはよう」


「いよいよテスト1週間前だね」


「さすがに俺もそろそろ勉強しないとな」


「お互いに頑張ろうね!」


「だな」


 それからは今日も何事もなく……と言いたいところだったのだが、そういうわけにもいかなかった。


普段と違う出来事が、今日は2つもあったのだ。


 1つ目は、彩花のことだ。


テスト1週間前だからか、朝だけでなく授業の合間の休み時間、さらにはお昼休みに至るまで、ずっと机に向かって勉強していた。


 そして2つ目は、智也である。


「悠! 俺に勉強を教えてくれ!」


「断る」


「即答かよ!? 俺達友達だろ!?」


「正確に言うなら『無理』だ。まだテスト勉強を全くしていない俺に、何が教えられると?」


「大丈夫! 少なくとも俺よりは頭がいいはずだ! 絶対に!」


 そう言って智也が見せつけてきたのは、今日の数学の授業で返却された小テストだった。


得点は10点満点中――2点。


たしかに俺の方が頭がいいようだった。ちなみに俺が今日返却された小テストの点数は満点である。これは俺が特別賢いわけではなく、小テストの内容が超基礎的なものしかなかったからだ。要するに智也はこのままだと、確実に赤点一直線である。


「たしかにヤバいな……」


「だろ!?」


「はぁ……今日だけだぞ」


「さすが悠! 愛してる!」


「……」


「冗談だからガチで引くな!」


 俺は仕方なく、放課後に教室に残って智也に勉強を教えることにした。


智也は数学だけが極端に苦手らしく、他の教科はここまで壊滅的ではないそうだ。1時間ほどかけて、今日の小テストで智也が理解できていなかった解法を教えてやる。


地頭は決して悪くないらしく、俺が解説すると要所で質問を挟みつつも、基本的にはすぐに理解してくれた。


「いやぁ助かった! ありがとな!」


「気にするな」


「やっぱ持つべきものは悠だわ!」


「大袈裟すぎるだろ……」


「はは! そんじゃ帰るか!」


「だな」


 俺と智也は駅まで一緒に歩き、改札前で別れた。


なんだかんだで、智也とこれだけじっくり話したのは久しぶりだった。席替えをする前に智也が言っていた通り、席替え後も定期的に俺の席へ来て雑談をしてくれてはいたのだが、智也には既に他にも友人が沢山できているため、話す頻度自体は少なくなっていたのだ。


 それからも、テスト勉強を少しずつ進めながら平穏な日常を過ごしていたのだが――忘れかけた頃に『ヤツ』はやってくる。


 入学式の日、その1週間後。そして今日。ヤツはまたしても俺の平穏を容赦なく脅かすのだ。


『1年1組の翡翠悠くん。今すぐ職員室に来てください。繰り返します。1年1組の翡翠悠くん。今すぐ職員室に来てください』


 ――校内放送である。


 いつも通り、昼休みに俺のベストプレイス(駐輪場)へ向かおうとした矢先の出来事だった。


 ただ、いつもと違っていたのは……呼び出し先が『生徒会室』ではなく『職員室』であることだった。


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