幼馴染との電話
菜奈さんのお悩み相談会が終わって帰宅すると、俺はすぐに彩花へLINEでメッセージを送っておいた。
「それとなく俺からも聞いておく」という約束を菜奈さんと交わしていたので、さっそく実行に移したわけだ。
メッセージを送信してから夕飯を食べ、楓と軽くゲームをして風呂から上がった頃――ようやく彩花からの返信が届いていた。
ここまで彩花から返信が遅いのも珍しい気がする。といっても、今まで彩花とLINEをした回数なんて片手で数えるほどしかないのだが。
『どうしたの?』
『今、大丈夫か?』
『うん。大丈夫だよ?』
(さて、俺は何を聞けばいいのだろうか?)
最終目標としては「菜奈さんに冷たい態度を取っている理由」を聞き出せばいいのだが、いきなりズバッと核心を突いていいものだろうか。
……まあ、いいか。
『菜奈さんのこと避けてるのか?』
『ごめん。いきなり何を言ってるの?』
まあ、そうなるよな。
だが、彩花のこの素の反応を見る限り、菜奈さんのことが嫌いになったわけではなさそうだ。「嫌われたかもしれない」というのは、単なる菜奈さんの早とちりだったのだろう。それなら、俺がこれ以上詮索する必要もないはずだ。
俺が勝手に一人で納得して自己完結していると、返事がないことに痺れを切らしたのか、スマホの画面に【彩花】の着信が表示された。
「もしもし」
『ねぇ、悠くん。私がお姉ちゃんを避けてるだなんて、いきなりどうしたの?』
「あぁ、それはな……」
別に隠すようなことでもないので、俺は菜奈さんに呼び出されたこと、そしてそこで相談された内容を正直に打ち明けた。
すると、彩花もどこか納得がいった様子で納得の声を漏らした。
『あぁ……確かに最近、部屋からあまり出てないかも……』
「部屋に引きこもって何してんだ?」
『う~ん……そこは乙女の秘密ってことで!』
「ふ~ん。まあ、言いたくないならいいけど」
正直、彩花が部屋で何をしているのかの見当はついていた。ゴールデンウィークに入る前の、朝の教室での様子を見ていれば誰でも簡単に察しがつく。
だが、彩花本人が隠したがっている以上、ここで野暮なツッコミを入れるのは無粋というものだろう。
『悠くんって、意外とドライだよね?』
「そうか?」
『うん。でも、今はそれがありがたいかも』
「なら、良かった」
『ふふ。悠くんも変わったね』
「?」
『小学生の頃の悠くんは、もっと無邪気で明るい子だったよ』
「あぁ、確かにそうかもな。俺も大人になったってことじゃないか?」
『大人って……悠くんも私も、まだ高校生だからね?』
「間違いない」
それからも彩花としばらく他愛のない雑談を交わした。
電話越しの声を聞く限り、特に変わった様子もなく普段通りの彩花だった。ただ、ひとつだけ違和感を覚えるとするなら、普段より微妙にテンションが高いような気がすることだ。まるで、久しぶりに誰かと喋ったかのような高揚感が見え隠れしている。
(……まあ、気のせいだと思うのだが)
「それじゃ、菜奈さんと少しでも話してあげてくれよな」
『うん。なんか、ごめんね?』
「いや、いいよ」
『ふふ。悠くんは優しいね』
「ドライなのにか?」
『ドライでもだよ。悠くんが優しいのは、小学生の時から変わってないね!』
「……」
『あれ、照れてる?』
「うるさい」
『ふふ。それじゃあ、そろそろ切るね?』
「うん」
『おやすみなさい、悠くん』
「おやすみ」
……ふぅ、これで大丈夫だろう。
基本的にはいつもの彩花だったし、菜奈さんを嫌ったり避けていたりする様子は微塵もなかった。彩回のことだから、電話を切った直後にでも菜奈さんの部屋へ話に行っているはずだ。
そう思っていると、ポケットの中でスマホが震え、新着メッセージが届いたことを教えてくれた。
『悠くん! ありがとう! お姉ちゃん嫌われてなかったよ!』
『よかったね』
『うん!』
これで一件落着だ。
やり遂げたというささやかな達成感と、心地よい眠気が同時に襲ってきた。今日のところは時間的には少し早いが、このまま休むとしよう。
俺はスマホを充電器に挿し、ベッドの上へと潜り込むのだった。
どうも! 白浜 海です!!
気が付けば200ブクマ超えてましたΣ(゜д゜;)
総合ポイントももう少しで1000に到達できそうです!
本当にありがとうございます!!
これからも何卒よろしくお願いいたします!!




