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陰キャな俺の初恋相手の妹が、学年一の美少女になっていた。それでも、俺からしたらそれだけだ。  作者: 白浜 海


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2/12

陰キャと陽キャ

 俺と彩花は同じクラスだったこともあり、一緒に教室へと向かった。


 教室に入ると、入学式にはまだ時間があるにも関わらず、既に半数以上の生徒が席に着いていた。これから1年間同じクラスで過ごしていく仲間となる訳だが、俺には特に興味もない。高校生活も中学の時と同様、陰キャとして過ごすと決めているので、関わることもほとんどないからだ。


 教室に入ってまず目に入ったのは、黒板に貼られた一枚の紙だった。そこにはクラスメイトの名前と座席の配置が書かれていたが、どうやら出席番号順に決まっているらしく、必然的に俺と彩花は席が離れてしまうことになった。


「それじゃ、俺は席に行くから」


「うん! 改めてこれからよろしくね!」


「おう」


 俺の席は……廊下側の一番前の席だった。


 よりによって一番前か。だが、廊下側の端ということもあり、俺の周りに配置される人間が必然的に少なくなると考えれば、陰キャ的には悪くはない。ただ、一番前というのは先生との距離感が近いせいか、どうしても嫌だと感じてしまうのは仕方あるまい。


「よっ! 俺は福井智也ってんだ。席も前後だし、これも何かの縁だな。よろしく!」


「あぁ。俺は翡翠悠だ。よろしく」


 俺に声を掛けてきたのは、後ろの席になった福井智也という男だった。


 ここで、陰キャを極めた俺からのアドバイスを1つ。陰キャとして地味な日々を送りたいのなら、こういう場面で変にキョドったりせずに自然に挨拶を交わしておくことだ。ここでオドオドしてしまうと、からかいの対象になりかねない。そうなれば、今後の高校生活に支障をきたすだろう。陰キャと言えど、最低限のコミュニケーション能力は必要なのだ。


「なぁ、一緒に入ってきたあの可愛い子、翡翠の彼女なのか?」


「いいや。ただの幼馴染だ」


「そっかぁ、付き合ってないのか。それにしてもあんな可愛い幼馴染がいるなんて羨ましいぜ」


「そうか」


 なるほど。それが聞きたくて声を掛けてきたのか。だったら、もう俺に話しかけてくることはないだろう。


 そう決めつけた俺は、鞄から一冊の本を取り出して『話しかけるなアピール』を遠回しに展開する。


 ここでも1つアドバイスをしておこう。話しかけるなアピールをする際は、会話がきちんと終わってからやること。会話の途中であからさまにやってしまうと「感じの悪いやつ」というイメージが定着し、望まぬ悪目立ちをしてしまうのだ。


 福井は俺達が付き合っていないと知れて満足したのか、制服のポケットからスマートフォンを取り出して操作し始めた。


 ふむ、我ながら完璧である。これで、俺が読書をしている間に話しかけてくることはないだろう。休み時間なんかもこうして本を読んでおけばいい。「あいつは本ばかり読むやつ」という印象さえつければ、誰も話しかけてこなくなる。一度その立ち位置を確立してしまえば、気兼ねなく快適な陰キャライフを送ることができるのだ。


「なぁ、翡翠」


「……え?」


「翡翠ってインスタとかやってないのか?」


「してないけど……」


 何故だ……何故話しかけてくる?


 流れは完璧だったはずだ。読書を始めた相手に話しかけるなんて、普通なら気まずくて避けるだろ?『あっ、本読んでるから後にしよう』となるのが自然な流れのはずだ。


 それにインスタだって? そんなもの、俺がやっているわけがないだろう。陽キャはインスタを嗜み、陰キャはX(旧Twitter)を嗜む。これこそが世の中の真理だ。入学式の日から自席で黙々と本を読む男が陰キャでなくて何だというのだ。そんな俺がインスタなんてやっているはずがない。


「そっかぁ。せっかくだしフォローしておこうと思ったんだけどな」


「そうか。それは悪かったな」


「んじゃ、LINE教えてくれよ」


「まぁ、それなら……」


 いくら陰キャであってもLINEくらいは俺だってやっている。家族と連絡を取る際にメールだと面倒だからな。


 もちろん、俺のLINEの友達欄には家族しか並んでいない。その中でもやり取りをするのは妹くらいのものだ。もはや俺のLINEは妹専用アプリと化している。名誉のために言っておくが、俺はシスコンなんかでは決してない。決して、だ。


 とまぁ俺の事情は置いておくとして、LINEを交換するべく俺はQRコードを表示し、それを智也が読み取る。


「うし! これで登録完了!」


「あぁ」


「なぁ、翡翠のこと名前で呼んでもいいか?」


「別に構わないぞ」


「んじゃ、悠って呼ばせてもらうな。俺のことも智也でいいから」


「了解だ」


 このスムーズなコミュニケーション能力……間違いない。こいつはクラスのカーストトップに君臨するタイプの陽キャだ。くそ……まさかこんな奴が俺の後ろの席だなんて、入学早々ついていない。


 俺が陰キャを極めた者なら、智也は陽キャを極めた者だ。陰と陽は決して惹かれ合うことはないのだから、こいつとの付き合いも最初だけだろう――そう思っていたのだが。


「なぁ、悠」


「ん? なんだ?」


「悠の幼馴染って、悠のこと好きなのか?」


「……は?」


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