久しぶりの4人
朝からのクラスメイト達からの謎の視線の理由が分かったので、午後の授業は無事に集中して受けることができた。
昼休みに生徒会室から教室へ戻った時も刺さるような視線が集まったが、理由が割れている以上こればっかりは仕方がないので、俺は気にしないように徹底する。人間とはすごいもので、一度割り切ってしまうとその視線もあまり気にならなくなるものだ。
そんなわけで、午後の授業も何事もなく終了した。
帰りのホームルームが終わって解散となったタイミングで、俺は彩花に声を掛けて2人で生徒会室へと向かう。
なぜ生徒会室集合なのかと言うと、校門の前で待ち合わせをすると生徒会長である菜奈さんの存在感が強すぎて目立ってしまうからだ。人が少なくなるのを待ってから一緒に出かけた方がいい、という霧島先輩からのアドバイスである。
(もう、霧島先輩が生徒会長になればいいのに……)と本気で思ってしまうのは、さすがに失礼だろうか。
「私、中学生の頃も含めて生徒会室に行くのって初めてかも」
「俺はこれで3度目だな」
「うちのお姉ちゃんが本当にごめんなさい……」
「いや、気にしてないからいいよ。これでこそ菜奈さんって感じもするしな」
「そう言ってもらえると本当に助かるよ。私としては、お姉ちゃんにはもう少し……ね?」
彩花はあえて言葉を濁したが、言いたいことは痛いほどよく分かる。
俺が妹の楓を心配しているように、彩花も姉である菜奈さんのことが心配なのだろう。主に精神的な面において。俺は年下の妹の心配だが、年上の姉の心配をしている彩花の方が俺より大変なのかもしれない。
そんな会話を交わしながら生徒会室に到着し、いつものようにトントンとノックすると、すぐに中から返事が返ってきた。
「どうぞ」
「「失礼します」」
「よく来たね! 妹よ、弟よ!」
「いや、俺は弟じゃないんで」
「もぉ! 悠くんノリが悪いよ!」
「そんなことよりもお姉ちゃん。どこに行くの?」
「実の妹の彩花までお姉ちゃんに冷たい!?」
菜奈さんはショックを受けたように床へへたり込み、顔を両手で覆ってシクシクと泣くフリを始める。
……この茶番はいつまで続くのだろうか。彩花も俺と同じことを考えていたのか、自然と目が合ってお互いに頷き合う。
「それじゃ、失礼します」
「またね、お姉ちゃん」
「ちょっと! ダメよ! 今からお姉ちゃんと遊びに行くんだから!」
菜奈さんは速攻で泣き真似をやめて立ち上がった。これでようやくまともに話ができそうだ。こうでもしないと、あの茶番が長々と続くであろうことは今までの経験でよく理解していた。
「それで? どこに行くの?」
「そりゃもう、放課後の寄り道と言ったらあそこしかないでしょ!」
「「?」」
「歌って踊れるカラオケしかないでしょ!」
「いや、カラオケは歌う場所であって踊るところじゃないからな?」
カラオケか……行ったことないな。彩花は行き慣れている様子で「別にいいけど」といった態度だ。
対する菜奈さんはすっかり行く気満々なようで、既に生徒会室に置いてあったペンを「ズチャズチャ」と口ずさみながら振っている。菜奈さんは歌いたいのではなく、マラカスを振り回したいだけのようだ。意味が分からない。
「あっ、悠くん!」
「なに?」
「せっかくだし楓ちゃんも呼んでよ!」
「あっ、確かに。私も久しぶりに楓ちゃんに会いたい!」
「まあ、いいけど」
俺はポケットからスマホを取り出し、楓へ『彩花達とカラオケに行くけど来ないか?』とメッセージを送ると、秒で返信が届いた。
「楓も来るって」
「やったぁ! お姉ちゃん大勝利!」
「3年ぶりかぁ。楓ちゃんも可愛くなってるんだろうね!」
それから俺達は生徒会室で10分ほど話し込んだ後、放課後の校舎を出てカラオケ店へと向かった。楓とは現地集合ということになっている。
駅近くにあるカラオケ店の前に到着すると、既に到着していた楓が俺達の姿を見つけるなり、パタパタと小走りで駆け寄ってきた。
「あっ、お兄ちゃん!」
「おう」
「久しぶり、楓ちゃん!」
「菜奈お姉ちゃん!?」
「そうだよ! 菜奈お姉ちゃんだよ!」
「えっ!? すっごく美人さんになってる!」
「楓ちゃんもすっごく可愛くなってるよ!」
「えへへ」
菜奈さんと楓はキャッキャと抱きつき合っていた。菜奈さんに至っては楓のほっぺたに頬擦りまでしている。
彩花は完全に出遅れたと言わんばかりに、揉みくちゃにされている楓へ話しかける。
「楓ちゃん、久しぶりだね!」
「彩花お姉ちゃん!」
楓は菜奈さんからスルリと抜け出すと、今度は彩花に向かって飛びついた。彩花も満更ではない様子で、ニコニコと笑顔で楓を抱き返す。
それを微笑ましく眺めていると、菜奈さんが何を勘違いしたのか俺へ向かって両手を広げて突進してきたので、俺は全力で抵抗する。
「ちょっと菜奈さん!? いきなり何!?」
「いやぁ、悠くんだけ寂しそうだなと思って!」
「俺は全然大丈夫だから!」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
彩花も菜奈さんの暴走を止めるべく協力してくれた。
おかげで公衆の面前で抱きつかれるという大惨事は回避できたものの、通行人からの視線が痛すぎる。逃げるようにカラオケ店の中へと入り、俺に続いて他の3人も雪崩れ込んできた。
「それにしてもあれだね! 4人揃って遊ぶのも久しぶりだね!」
「3年ぶりかぁ」
「ふふ。またこうして皆で遊べるなんてね!」
「楓もお姉ちゃん達とまた遊べて嬉しいよ!」
昔を懐かしむように言葉を交わしながら受付を済ませ、俺達は案内された個室へと向かっていくのだった。
どうも! 白浜 海です!
日間ランキング(現実世界)TOP3入りしてました!!
本当にありがとうございます!!
まさかここまで来られるとは……
正直言って、現実味があまりございません笑
読んで頂いているのはもちろんのこと、ブクマや☆評価、リアクションまでいただけているのは本当に励みになっております!!
まだまだ頑張って参りますので、
今後ともよろしくお願いいたします!!




